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2015年6月24日 (水)

TVアニメ「響け!! ユーフォニアム」第11話の感想

12話の放映も終わったけど、別に気にしない。

11話の感想。

というわけで、面白かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

アニメ見てる時って、おれの場合、年齢感覚がすごくシフトしてしまう。高校生を大人として見てる、っていうと言い過ぎだけど、大人のカリカチュアと思って見ているところがある。

ところが、「響け!ユーフォニアム」見てると、高校生の子供っぽさがリアルでビビる。いや、本当の高校生は、もう少し大人だったような、と言いたくなるくらい。

そこがいい。

 

バカリボンこと吉川優子。

普通に考えて、10話でトラッドな意地悪な先輩役(今にもトゥシューズの中に画鋲入れそう)に見えたのは、下げて上げるパターンに決まってる(少女マンガ脳)、11話では絶対に視聴者の共感を誘う過去や背景があることが描かれて、むしろ「ひどい先輩だと思ってゴメンね、頑張れリボンちゃん!」みたいな気持ちにさせてくれるんだと確信していた。前回の感想はその予想のもとに書いた。

それがなんとびっくり。リボンちゃん、全くもってぶっちぎりにバカだった。こんな庇いようのないバカ、久しぶりに見ましたよ。

いや、おれにはそう見えたというだけだけども。

高坂さんの上手さが分かってて、それでもソロは中世古先輩にやってもらいたい、とか。実力主義を信じて健気に練習した、他の全部員の努力をなんだと思っているんだ。

しかもその理由って「もっと聴かせてください……先輩のトランペット、聴いていたいんです」とか、要するに個人的な感傷じゃないか。

それで、大会前の大事な時期に顧問を中傷し、部員の分裂を招き、練習も困難にする。

中世古先輩の気持ちも、どれだけ思いやっているだろうか、おれには疑問だ。田中先輩は、中世古先輩の思いを「オーディションに不満があるわけじゃない。まして同情されたいなんて少しも思ってない。ただ納得いかないだけ」と代弁する。そうして「心の底からどうでもいい」と一切干渉しない。中世古先輩がプライベートで信頼し、一緒に県祭り行ったりするのは田中先輩の方なのは、わかる気がする。

再オーディションはともかく、八百長でソロを譲られて、それで中世古先輩が納得いく、と本気で思ったんだろうか。

 

この作品がすばらしいと思うのは、吉川さんに反省が全くないこと。自分のしでかしたことを後ろめたく思って、自己正当化の言い訳を並べる、みたいな湿り気が全然見られない。どころか、さらに重ねて、高坂さんにオーディションでの手抜きを要求する。

その頭の下げ方がまた爽やかでなぁ。むしろ「先輩のためにここまでする私カッコいい」みたいな自己陶酔すら感じられて、見てて恥ずかしいくらいだった。あんまり堂々として悪びれないから、高坂さんも「ひょっとして自分が悪者?」と錯覚してしまうほど。

大人には、あんな頭の下げ方は出来ないだろう。

おれ自身、世渡りのためには寝技も使う。ああいう裏取引みたいなこと持ちかけることもあったし、露骨にリベート使ったりとかもある。でも、一方でそれが正攻法でないという自覚がある。おれの分限でするようなことだ、所詮は合法で別に恥じるようなことではないんだけど、それでもどこか後ろめたさを刺激されて、どうしても頭を下げるとき、卑屈な気持ちにならざるをえない。

しかるに、この吉川さんの恬淡。そう、彼女はバカなのではない。ガキなのだ。大人であれならバカとしか言いようがないけど、十六七の小娘なのだと思えば、無理もない。ガキというか、無邪気なんだ。イノセントなんだ。

純粋なんだ。

こういう純粋さ、子供の無垢なワガママの描き出し方、見事だと思った。

この鮮やかさ、ジブリが、例えば「となりのトトロ」とかで三歳児の童心を活写したのを連想した。それ以上に鮮やかに、十七歳の身勝手を描き出していると思った。

 

高校生がこんなに幼く見えるのは、大人が大人としてしっかり描かれるからだと思う。

滝先生の「あなたがソロを吹きますか?」という問いの凄み。

そうか、なるほどと思った。この人、最初から、中世古先輩にこれを訊くために再オーディションをやることにしたんだな、とおれは例のごとく誤解した。

だから、あえて中世古先輩に有利になるような投票方法にしたのだろう。本当にフェアに学生に選ばせるなら秘密投票にすべきだし、理想的には演奏者が誰かも隠す工夫をすべきだろう。あんな形の公開投票なら、人気投票も同然だ。

もっと大差をつけて中世古先輩が勝つことを滝先生は予想していたのではないかとすら、おれは思う。その予想を覆し60人に沈黙を強いた高坂さんの実力は恐るべし。

中世古先輩が再オーディションで勝つ、その上で、「あなたがソロを吹きますか?」と中世古先輩に問おう。それが滝先生の計画だったのだと、おれは想像する。

 

さらにおれは想像する。

滝先生が、同じ状況で誰にでもこんな質問をしたとは思わない。中世古先輩だからこそだ。

8話で田中先輩の演奏を「恥ずかしげもなく」と滝先生は表現する。田中先輩は、そういう言われ方をするのを喜ぶ、という判断あってのことだろう。どうしてそれが分かるのかは分からない。指揮台から演奏を聴くだけでそこまで生徒の為人を把握できるものだろうか。しかし、とにかく滝先生は理解している。(人前で「恥ずかしげもなく」と言われて喜ぶ田中先輩のキャラも興味深い。実は見た目ほど超然としているわけではなく、そう見せかけたいだけなのかもしれない。まあその話は別の機会に)

中世古先輩のことも、そういうレベルで理解した上で、この質問をしているんだと、おれは思う。

 

10話で副顧問軍曹が助言した時。「音楽は嘘をつけない。いい音はいい音といわざるを得ない」という言葉では、滝先生は顔色を動かさない。

しかし、「お父様もそう言ってらしたと記憶しています」と言われて、ようやく理解の色が広がる。その細かい表情の芝居が印象的だった。

滝先生は、父親が吹奏楽の偉い先生なんだと、久美子さんのお姉さんが言ってた。おれの想像にすぎないが、滝先生自身も、ひょっとしたら学生の頃、親の七光りというようなやっかみを受けたのかもしれない。

実は高校の部活レベルでは、音楽は嘘をつかないかもしれないが、いい音をいい音と言わない人はいるのだ。それが分からない人も、分かってても認めない人も。ちょうど吉川優子さんみたいに。それを滝先生は身をもって知ってて、だから「いい音はいい音といわざるを得ない」とか言われても、そんな空論、と思う。

事実、高坂麗奈があれほどの音を毎放課後校舎の谷間に響かせているのに、自分はろくに吹けもしないくせに、吉川優子は不正を疑ったじゃないか。

しかし、「お父様」を持ち出されて、気がつく。

おれの想像だけど、滝先生は父親と吹奏楽について対立があったりするんじゃないか。機械的にベストの演奏家を並べる編成をする父親に対して、意外にも滝先生は、アンサンブルは単なる上手い個人の寄せ集めではない、と主張していたりとか。チームなんだ、ファミリーなんだ、命を持った集まりなんだ、と。

かつて、一年生を守る為に自分のコンクール出場をさえかけた中世古香織、いまも高坂さんを守って一緒に昼食を摂る、トランペットのパートリーダー。

そう、いまの自分は機械的に技術を評価しただけではなかったか。

中世古香織のパートリーダーとしての側面を、本当にちゃんと評価したか。

だから、いま、訊くのだ。奏者ではなく、パートリーダーとしての中世古先輩に。トランペットの構成はどうしますか? 「あなたがソロを吹きますか?」 と。

それが、中世古先輩には通じたんじゃないかと、おれは想像する。

 

だったら熱いよなぁ、と。

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