TVアニメ「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 続」1話と2話の感想
アニガイル2期目観てます。面白いです。
今シーズンは褒めやすそうで良かったと思いました。
以下、原作10.5巻までのネタバレありで、原作7巻と比較したりしながら、感想を書いていきます。
おれはpixivで二次創作 してて、そのキャプションでも書いちゃったんだけど、今期のキャラデザが好み。
なんか脱いだら乳首光りそうな、美木杉愛九郎的に色っぽい八幡がオツじゃないですか。そう言えば比企谷くんは、無い袖を振って見せるところもヌーディストっぽいよな。
以前も書いたけど、基本、ヒロインに感情移入して主人公に恋をするのがおれのラノベの読み方なわけで、文中の描写以上に美形をイメージしていることが多いので。このくらいの美少年じゃないと、正直物足りないわけですよ。
というわけで、おれは絵についての教養を全く欠く男だが、作画については不満を少しも持たないわけで、あのキラッキラした京都の紅葉の美しさ(「ちはやふる」かと思った)も、細かい表情のアニメーションも、絶品だと思った。
特に2話のラスト近く、竹林の小径で、戸部くんと向かい合った海老名さんの表情。
「ああ、俺が想像したとおりの表情だ」
まさにこれ。
それに、その後、比企谷くんの袖を引いて「効率とか、そういうことじゃないよ」と、首を振る、由比ヶ浜さんの後頭部の描写がとても良かった。ネットリと髪が揺れる、なんだか恐ろしいような描写がすごいと思った。
絵と演出も勿論だけど、あの分厚い7巻をたった2話に落とし込んで、全く不足を感じさせない構成が素晴らしい。
こうしてコンパクトにまとめられると、わかりやすい。確かにムカつくヤツだよな、比企谷くん。奉仕部の女子が2人とも泣いたり怒ったりして当然だと、しみじみ思った。
「猿の手」みたいなヤツだ。
一見、皆に同調して趣旨に賛同するかに見えて、実は面従腹背、むしろ計画の本質を踏みにじって、一番大事なところを台無しにする。表面的にはあたかも依頼をこなした体裁だから、始末が悪い。
受動攻撃、ってヤツ?
体育祭の棒倒しで反則した時と同質だ。
今回、表だって戸部くんから受けた依頼は「彼の告白をサポートしろ」ということだ。戸部は確かに「フられるとキツイわけ」とは言うけど、彼の告白を妨害するのでは本末転倒もいいところだ。
でも、今回はその行動の意味が分かりやすい。体育祭の時は比企谷くんの動機がおれには読み取れないのだけれど、今回はすごくはっきりしていて、むしろ痛く共感するまである。
海老名さんだ。
比企谷くんだけのパッシヴアグレッションではない。むしろ主体は海老名さんの怒りなのだと、おれは思った。みんなして結託して、彼女の居場所を奪い、追い詰める、非情な集団圧力に、彼女が孤独に怒っていて。
比企谷くんは、そんな彼女をどうしても、見殺しにできなかったのだ。
その辺のことについては以前も書いたし、割愛。
今日は由比ヶ浜さんのこと書きたい。以前7巻の感想書いた時はあまり書かなかったし。最新10.5巻まで全巻読んで、どうもラスボスは由比ヶ浜さんだなと確信しつつある、おれの誤解を開陳しよう。
アニメで、比企谷くんが三浦さんと出会う、夜のコンビニのシーンが無くならなくて良かった。
何より、三浦さんの「結衣と付き合っているならわかるっしょ」ってセリフが残って、本当に良かった。
そうなんだよ。
ってか、三浦さんだって由比ヶ浜さんとつきあっているよね。なんで由比ヶ浜さんに、直に言わないんだろう?
そもそも、由比ヶ浜さん、海老名さんの友達のはずだよね。由比ヶ浜さんは、三浦さんと同じような懸念を持たないんだろうか?
おれが7巻で一番不思議に思うのは、どうして由比ヶ浜さんは戸部くんの依頼を受けたがったのか、ということ。
由比ヶ浜さんは物語開始当初から現在に至るまで、徹底して、比企谷くんの精神の自由を理解せず、尊重しない。身勝手な優しさを武器にひたすら侵略に努めている。上等な料理に蜂蜜をぶちまけるがごとき、とは当に由比ヶ浜さんの姿勢であろう。
そのことを、おれはこの娘がおバカだからだ、と思っていた。7巻が刊行された頃くらいまでは。
空気読めると自称するヤツに限って実は全く人の気持ちが分からない、という皮肉のためだけに書かれたキャラクターなんだと、そう思っていたのだ。
しかし、最新巻まで読むに至って、おれの理解は変わりつつある。
何度(2013.12.12,2014.11.18)も書いてきたけど、しつこくもう一回指摘しよう。由比ヶ浜さんの卓越した政争能力のことだ。
例によって、おれの想像にすぎないのだけれど。
三浦さんが夜のコンビニでヒキオに言った言葉から、二つのことがわかる。
まず、三浦さんは最早グループの女王ではないということだ。
4月、由比ヶ浜さんが奉仕部に入部するまでの時期であれば、三浦さんが一言、由比ヶ浜さんに「やめなよ」と言えばすんだ話だったろう。しかし、今、三浦さんは卑屈にも、ほとんど接点のなかったヒキオに言うしかないのだ。
これは単に由比ヶ浜さんに逆らえないというだけでなく、他に言うこと聞いてくれる人もいないということなんじゃないかと思った。
そこまで三浦さんの立場は弱くなっている。戸部の依頼があって奉仕部が動いていることさえ、把握していない。由比ヶ浜さんが話を通していないのだ。無視して話を進め、事後承諾を迫れば済む程度の存在として扱われていて、しかも三浦さん自身もその地位に甘んじて、由比ヶ浜さんの顔色をうかがっている。
もう一つは、由比ヶ浜さんの確信的な故意だ。
彼女は分かっていてやっているのだと思う。三浦さんが察している海老名さんの傾向を、由比ヶ浜さんが分かっていないはずがない。
海老名さんにその気のないことも、戸部くんがあえなく振られるだろうことも、その後、グループの空気が変わってしまうことも。
ライトアップされた嵐山の竹林の細道。善意の包囲網に絡め取られ、薄い笑顔の下に海老名さんがありありと浮かべた、あの絶望の色さえも。
由比ヶ浜さんは、きっと予想していたに違いないのだ。
分かった上で、由比ヶ浜さんは、それを選んだのだろう。
そうでなければ、三浦さんだってもう少し由比ヶ浜さんにものを言えたはずだ。新幹線の席取りみたいなどうでもいいことなら「あーし窓側ねー」って、表面的にはお姫様みたいなワガママ言わせてもらっているのだから。
でもこの案件はガチなのだ。異論を唱えれば、真っ向から由比ヶ浜さんに刃向かうことになる。それは今や、クラス内パワーゲームでの死を意味する。
だから、三浦さんは、座して見守ることしかできない。どんなに海老名さんに共感と友情を感じても、痛ましく思いながら、居場所を奪われていく海老名さんを見ていることしかできないのだ。
せめて、その現場に居合わせない。自分は共犯ではないのだ、と精一杯の抗議の思いを込めて、告白の瞬間を自室で窓を見て過ごす三浦さんのアニメオリジナルのカットが、胸に迫る。
こんなにも周囲を踏みにじる由比ヶ浜さんの目的は、分からない。
おれには、7巻開始時点で、戸部の依頼を受けることに特に意味があったとは思えない。
ただやっぱり一つ思うのは、7巻で比企谷くんが抱える葛藤は、本来なら由比ヶ浜さんが抱えるはずのものではなかったか、ということ。海老名さんも戸部くんも由比ヶ浜さんの友人ではないか。この案件はどこまでも、由比ヶ浜グループの内輪もめだったはずだ。
「内輪もめは好きだ。なぜなら俺は内輪にいないからなっ!」
だから比企谷くんは本来ならそんなことを言って、高みの見物でせせら笑っていればいいはずのことだ。
それなのに、彼は、まるで我と我が身のことであるように、悩んで苦しんで、そして、ギリギリのところでもっとも孤立無援の、もっとも理解しがたい少女の求めに応えようとする。誰一人、当事者の海老名さんさえ背負おうとしなかった責任を、敢えて負おうとしてまで。
それが由比ヶ浜さんの狙いだったのかな、とおれは疑っている。
もし、さっきのおれの想像通り、由比ヶ浜さんがグループの影の女王的な存在になりつつあるとしたら、事態を丸く収める責任だって、本当ならあるはずだ。
でも由比ヶ浜さんは、そういうのは嫌なんじゃないか。
君臨して支配と操作の快を味わいたいけど、統治の責任は負いたくない。だから、奉仕部を巻き込んで責任の所在を混乱させた。9巻、海浜総合高校の生徒会長と同じ責任回避の戦略だ。
その目的なら、奉仕部を巻き込むだけで達成できる。比企谷くんがどう行動しようと、戸部くんが告白しようがふられようが、海老名さんが傷つこうがグループから離れようが、どう転んでも由比ヶ浜さんが責任を問われる可能性はすごく小さくなる。ほら、由比ヶ浜さんが傷つかない世界の完成だ。簡単だろ?
こういう現実的な方針を迷わず選べるところが、この娘の政治力の秘訣なんだろうな。
どうしても繊細なこだわりを捨てられない比企谷くんや雪乃さんと、一番違うのが、ここなんだとおれは思った。
政治屋らしく、自分から状況をリードすることがほとんどない。彼女は骨の髄までオポチュニストなのだ。時流を読んで自分の得になる手を打つだけ。今回だって、奉仕部に依頼が持ち込まれたあたりまではたまたまなんじゃないかと思う。その偶然をチャンスとして最大限有効活用するところが、由比ヶ浜さんの巧みさなんだとおれは思っている。
彼女には、夢も理想も正義も意地も誇りも美意識も恥もない。もちろん、海老名さんの孤独も、三浦さんの友情も、全く考慮しない。そんなもの、由比ヶ浜さんの利害とどんな関係が?
それにしても由比ヶ浜さんの日和見は見事だと思った。天才的だと言っていい。
彼女が、比企谷くんの行動を予期できたとは思わない。比企谷くんが見過ごせなかった海老名さんの孤独や苦痛。それらを理解する感性は、由比ヶ浜さんにはないだろうから。
だから、全く意表を突かれたはずだろうに、瞬時にイニシアティブをとりかえして、まるで自分が被害者であるかのように泣き出してみせる。傷つきましたアピールで相手を罪悪感に突き落とす、これも受動攻撃の一つだけど、海老名さんや比企谷くん、彼女の直前に怒りを表明した雪乃さんのそれに比べて、完成度が桁違いだ。付け入る隙がほとんどない。
前から由比ヶ浜さんの責任を問う意見はあったと思う。例えば、7巻が出た時から「最初から比企谷くんも雪乃さんも断ろうとした無理筋の案件なのに、由比ヶ浜さんがごり押ししたから引き受けたんじゃないか」みたいな意見はあったように思う。おれも何回かそういうのを読んだ記憶がある。
それは確かにそうだと思う。おれは、仮にそう言って比企谷くんが怒り出したって、まああんまり男らしいとは思わないけど、正直今更何言ってんだ情けない、みたいに思って幻滅だけど、でもでも、気持ちは分かると思う。人情としてもっともだと思う。
でも、すでに由比ヶ浜さんが泣き出してしまった後では、そんなこと言い出せる空気じゃなくなる。
さらに、ここで、これまで積み重ねきたおバカイメージが生きてくる。おれだって、今でこそこのシーンで由比ヶ浜さんの政治的辣腕を感じ取って背筋に悪寒を感じるけど、最初に7巻読んだときは、かわいそうに、比企谷くんの受動攻撃的な怒りに巻き込まれて、わけわかんないよね、とか思っちゃったのを覚えている。
そりゃ当時だって流石に「人の気持ち、もっと考えてよ……」と言いだしたときには、「おwwwまwwwいwwwwうwwwwww」と噴き出したけど、でも、仕方ないか、この子そんなに賢くないし、と、思っちゃったもんな。
当時の自分の不明を恥じる。そんなおバカちゃんに、こうもおいしいポジションばかり立ち回って「素敵な女の子」イメージを保てるわけがないじゃないか。ラノベのヒロインじゃあるまいし。
それにしても、比企谷くんが本当に怒らない。いや、怒れないのかな。
おれ、この子好き。
怒りがないわけではない、どころか世界を焼き尽くさんばかりの怒りが内心は煮えくり返っていて、一旦怒りだしたら自爆テロみたいな怒り方をする。
いやいや、そんな訳の分からない爆発の仕方をしてないで、穏やかに諄々と由比ヶ浜さんを叱ってやるべきなんだと思う。もしも大人同士ならそうするだろう。
そもそも依頼が来たときにキチンと叱って断るべきだし、そうでなくても、ここは、戸部くんが振られ、海老名さんが居場所をなくすのを、一緒に黙ってただ見守るべきだ。そして、連帯責任ではあるが由比ヶ浜さんにも確かに責任があり、今後は由比ヶ浜さんにも責任ある判断を求めたい、と叱るべきだ。
でも、これができない。比企谷くんには、そもそも、そういう方法があるという発想さえない。
俺ガイルって実にいい作品だと思うのは、平塚先生のセリフがここにこだましてくるところ。
「叱られることは悪いことではないよ。誰かが見てくれている証だ」
そう。
比企谷くんは、由比ヶ浜さんのことをまともに見てない、ってことなんだと思った。ずっと目をつぶって「素敵な女の子なんだ」と自分に言い聞かせるばかりで、正味の由比ヶ浜さんを見ようとしていない。
この辺が「感情を理解していない」と言われるあたりなんだろうか。
比企谷くんの一人称で書き続けられているこの物語の、いわば叙述トリックがそのへんに潜んでいる、みたいなおれの想像も以前書いた。おれの誤解によれば、そのトリックが暴かれていくことで、比企谷くんの世界への否認と韜晦が描かれていくのだ。だといいなぁ。
おれは想像している。その否認は比企谷くんの両親にも向けられている。いや、むしろ、両親との関係こそ、彼の否認と韜晦の、つまり怒りと恨みの端緒であり揺籃ではないか。
でも、多分おれが期待するようにはこの物語は進行しないだろうとも思っているとこないだ書いた。
なぜかと言うと、これもおれの想像に過ぎないのだが、それも極端に失礼なひどい想像なのだが、この作品は渡航先生の自伝的要素が濃厚だと、先生ご自身も認めておられるからだ。つまり、比企谷くんのこの世界への、つまり両親への否認された憎悪と怨恨を暴くことは、渡航先生ご自身のご両親への思いを吐露することになる。
これが芥川賞狙いとかの作品ならいざしらず、要するにアニメ化してBD売り上げで稼ごうぜみたいな産業の歯車としてのお仕事で、誰がそこまで真摯に自己を描き出すだろうか。読者だって困るし、編集者も退くだろう。
だから仕方ない。
多分、この先、おれははぐらかされたような気分を味わいつつ、読書ってやつぱり片思いなんだよな、ってしみじみするんだろうと思う。
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