アニメ「氷菓」感想 第15話「十文字事件」 第16話「最後の標的」
ドラゴンクエスト10をはじめたんですよ。
はまっています。
更新間隔が開きそうだな……
DQXについては、またいずれ書く機会もあるだろうけど、現時点で言えることはただ一つ。
amazonのレビューがすごい面白い。
以下に「氷菓」の感想。16話まで視聴したところで書いています。
例によってネタバレへの配慮はありません。ご注意下さい。
里志とホータローの対決、というのを、おれは随分楽しみにしていたんだ。
まさか、こんなにあっさりと、里志が白旗をあげてしまうとは。
第4話で「ホータローは薔薇色がうらやましいのかい?」と訊ねた、阪口大助の演技がとても印象的だったのになぁ。
16話の最後でみせた「期待してるよ」って、折木君の優越を認めたような態度を指して、白旗と言っているんじゃない。
「そまってあげない」というショッキングピンクという名の灰色を撤回して、探偵役を競おうとしたことだ。
思えば「薔薇色がうらやましいのかい?」という、あの問いは、福部君自身がうらやましさに苦しんでいなければ、出ないものね。
「十文字」は、やっぱり普通は「ジュウモンジ」と読むだろう。特にあんな風に、前後の文脈なく、署名のように書かれたらさ。「ジュウモジ」はないよ。
それなのに、無理に「ジュウモジ」と読む推理を披瀝する折木君の真意は、「古典部が十文字の最後の標的でありうる」というストーリーを作って流布しよう、そうして話題になって文集を販売しよう、明らかにそれだけだ。
折木君の成長が感じられる。
名探偵ではなく、推理作家としての自覚を持ち、意識的にその技術を用い、ストーリーを作り上げようとしているのだ。
折木君の才能は、遠垣内先輩を脅迫した件でのような、策略家というか、ハッタリ屋というか、詐欺師というか、本来そういうものだと思う。
ただ、それは非常に繊細で流動的な技術だから、誰のために、何のために、といった「ものの見方」がきちんと据わっていないと、十分な力を発揮しない。
その点を入須先輩に利用されたのが、前エピソードだった。
今回は、折木君は、自分の目的をはっきりと「文集を売る」の一点にしぼってきた。千反田さんの期待に応えることさえ後回し、という態度だ。
見事。
自分が何者であるか、という魅惑的な問題、誰かにとっての特別でありたいという誘惑、そんな物に惑わされ、傷付いて、腹を立てて八つ当たりした。思春期だのう。
しかし、そのわずか数週間後に、自分が何者であるかはとりあえず保留したまま、今、この場で自分は何が出来るのか、その中で何を為そうと選ぶのか、という問題に関心をスライドしている。
入須先輩が見れば、その自覚の充実を喜ぶだろう。はやく、女帝と折木君との絡みが見たいなぁ。
女帝と言えば、15話で、陸山会長閣下から「や、女帝さん」と呼び掛けられて、「ああ」と普通に返しているのがすごい良かった。
考えてみれば、女帝があの優しさと責任感と実務能力を兼ね備えて、生徒会長ではないのである。彼女の目を以てしても、陸山宗芳は生徒会長として適材適所なのだろう。
そういう彼が、躊躇わずに奇術部の公演で隣に座ってくれるのが、女帝ファンとしておれは嬉しい。
女帝にも「自覚ある」友人がいるのだ。陸山会長は異性だけれど、おそらく物を頼むときに「他人目のないところで二人きりで」等といった陋劣な手管に配慮する必要のない相手だろう。さばさばと実務的打ち合わせをして、しゃんしゃんで終わり。
誰か陸山×入須、書いてくれないかなぁ。
話戻すけど、今回は折木君が、全編を通じて初めて主体的な目的意識をもっている、という点で画期的なエピソードなわけで、そこが大事なところ。だから、事件の解決はどうでもいい。
ンだけど、どうでもいい、で、済んだらお話にならない。
多分、文集を売りさばく上で役に立つ人が、犯人とか関係者なんだろう。
どうも折木君は最終的には、犯人にゆすりたかりを働こうというつもりと見えて、古典部女性陣にその汚い企みを聞かせまいとしている(この辺りも女帝に似てきた)みたいだが。
15話のラストで、折木君が見ているのはカンヤ祭のwebページの「通信販売」のところだ。いかにも伏線でございという感じで挿入されたシーンだったから、きっと今後の展開を予言しているのだと想像する。
通信販売って、どういうやり方でか知らんけど、おそらくは、学園祭実行委員長にして生徒会長、陸山閣下を通さずには進むまい。
第16話で、「クドリャフカの順番」が、くがやま先輩の作画によるもの、と知った折木君が、これを十文字事件と結びつけようとする動機は、この辺りにあるんだろう。
視聴者は、「夕べには骸に」を持ち込んできたのが折木姉である以上、間違いなくキーアイテムだとわかっている。しかし、それは8時40分だかられいかちゃんの幼なじみアピール始まるはず式の推論であって、登場人物の目線では知る由もない根拠だ。
折木君としては、もし運よく生徒会関係者がこの件に噛んでいれば、上手いこと利用出来るんじゃないか、という程度の思考なんだろう。そしてこれは「お話」だから、都合良く運が良い展開になるだろう。
おれは想像する。
このエピソードでの「生きながら死んでいく犠牲」枠には、アンジョウ先輩が入るのだろうか、と。
関谷純や本郷さんのような、回想と伝聞でしか語られない、すでに物語から退場した人。
殺人事件なら被害者ポジションだよね。
彼女の退場は、表向きは漫研部長が言ったように転校したことになっているのだろうが、あるいは事情はそんなに単純ではないのかもしれない。そこには、あげたくてもあげられない悲鳴があったかもしれない。
おれがそんな風に想像するのは、アンジョウさんの友達だったというナコルル先輩の、あの驚く表情を見たからだ。「夕べには骸に」の書名を聞いた時、ナコルル先輩は確かに、痛みを噛み潰す顔をしていた。
「く」が、一見飛ばされたように見えるが、そのことにこそ「十文字」のメッセージが秘められている、と考えることもできる。
既に「く」は、失われたのだ、と。もうとっくに、そして永遠に、取り返しのつかない形で。
「陸山宗芳からクドリャフカの順番は失われた」と、十文字はメッセージカードを書くのだろうか。
あるいは逆かな。「クドリャフカの順番は陸山宗芳を失った」と記すのかもしれない。
表立って悼むことを禁じられた喪失を、悔やみ、嘆く。もしそうなら、その嘆きを禁じられたことへの怒りも、あるのかもしれない。
まあ、要するに、おれは陸山会長その人を、犯人だろうと想像している。
結論をそう定めてしまえば、それを補強する屁理屈をこねることは可能だろう。
事件現場に必ず置かれている「カンヤ祭の歩き方」は、占い研でも、お料理研でも、同じページが開かれたままおいてあった。画面を止めて観察すれば、被害にあった団体は、すべて、同じそのページに記されているのだ。
そして、そのページに「陸山宗芳」の名前も印字されている。被害団体名と同じ、ゴシック体で。
この冊子をそんな風に編集することが出来たのは、生徒会関係者だけだろう。
「被害に遭うのは参加団体だと思いこんでいたけど、「カンヤ祭の歩き方」のラストページでゴシック体で記されたモノだったんだよ!!」
「な、なんだってー!!」
みたいなやりとりがあれば、名探偵の推理の披露、という場面でも外連味も十分でしょ。
おれは結論ありきで屁理屈こねただけだが、逆の順番でプレゼンすれば、まるで当然の理論的結論のごときもっともらしさを演出することが可能だろう。
まあ、余談はこのくらいにして。
今回、古典部の面々の全員が「自分は何者か」という問題にとらわれてしまって、周りを見回す余裕が無いようなのが興味深い。
ただ折木君だけが、そこを保留にして、淡々と自分に出来ることを普段通りにしている。
おそらくこのことが、悲鳴もあげることが出来ず、生きながら死んでいく犠牲のあり方、つまりは薔薇色と灰色の相克のある一側面の陰影を浮かび上がらせてくる、はずだ。
きっと。
多分……
二段構えの謎解きが、これまでのエピソードでも繰り返された。十文字が誰か、という、一段目の謎に続き、その目的、動機は何か、という辺りが、きっと「夕べには骸に」の内容と響きあい、伊原さんが30部を間違えて200部にしてしまった心理的背景を説明するに、違いない。
……違いない!
安心院鐸玻を名乗って「夕べには骸に」のあとがきを書いた人、背景をちょっと手伝ったというその人は、何の根拠もないが、ナコルル先輩に間違いないとおれは信じているのだが(単に他にそういう雰囲気の人がいないだけ)。陸山先輩が十文字でなければ、この人だろうけど。
とにかく、陸山先輩とナコルル先輩の、十文字じゃない方が、第5話の糸魚川先生の役をやってくれるんだろう。
……だと良いなぁ。
続きが楽しみだ。
とは言うものの、実は正直なところ、自分の想像をあまり信じられない。
未だに「夕べには骸に」の内容が語られないし……。
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