2020年9月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

最近のトラックバック

@ゲーム

  • FFxiv
    FFXIV PROF
  • ぺたっとセルフィ
フォト

他のアカウント

« アニメ「氷菓」感想 第11話「愚者のエンドロール」その1 | トップページ | アニメ「氷菓」感想 "Why didn't she ask EBA" + 第11.5話「持つべきものは」 »

2012年7月 4日 (水)

アニメ「氷菓」感想 第11話「愚者のエンドロール」その2

11話感想の続きです。
 
いつものように11話までのネタバレが岡崎最高ぉぉぉ!!なのでご了承下さい。


おれの想像だけど、入須さん側からみると、折木君が暗黙の了解に基づく共犯者に見えていたのではないかな、と。
折木君「これが本郷先輩の真意(という名目の代替案)です」
女帝「そうか。これが本郷の真意(という名目の代替案)か」
女帝的にはそういうやり取りをしている、と思っていたのではないか。
だって、女帝も、前以って羽場案を聞いていた筈で、当然ザイルのことも知っていた筈なんだ。
折木君がザイルをオミットしてきた時点で、折木君が自覚的に創作してくれているのだ、と思うのが自然だろう。
勿論、本郷さんを悪者にしない、という目的上、それをあからさまに口にはできないのだけど。
入須さんはどんなにか嬉しかったろうか。手の一つも握らせてやりたくなっても無理はない。
彼女の意図をそのレベルで汲んでくれる、そんな相手は、多分そんなに多くはない。
高校生で、となったら、まず皆無だ。
「フトコロ刀ゲットだぜ‼」
と内心盛り上がっても、当然と思う。
彼は分かる人なのだ、と。
彼なら、入須冬実の、孤独を、苦渋を、共にできるのだ、と。
女帝としての長年の自制の修練がなければ、飛び上がって抱きつきたいくらいだったかもしれない。

そう思うとなぁ。
第11話。イケメンの下級生に校門で待ち伏せされて、真剣な面持ちで「お話があります」と言われて。
二人連れ立って、喫茶一二三に向かう、途みちの入須さんの気持ちをおれはついつい想像してしまう。
『告白ktkr‼』
ぐらいは絶対思ってたと思う。
『フッ。私の罪な美貌がまたも虜を一人増やしてしまったか。しかし、許せ折木。私の交際は廉くはない。ああ、この輝く晩夏の夕べが、またもや美少年の傷心の涙に濡れるのか……』
とかなんとか、浮かれた思考を巡らせていたのは間違いない(迫真)
『けど、折木君をただフッちゃうのは勿体無いかな、すごいイケメンだし、頭脳明晰。視野も広く、政治的なセンスもいい。供恵さんの弟だというスペシャルエクストラボーナスポイントを差っ引いても、なお魅力あふれる逸物だ。なんとか、つかず離れずキープしておく手はないか……』
もういいっ…!
もう…休めっ…!
入須冬実っ…!
この後の展開を知るおれは、涙を禁じ得ない。かわいそう。かわいそうすぎる。
いや、全部おれが想像しているだけなんですけど。

そういう流れを踏まえると(いやおれの想像だけの流れだし)、折木君から
「誰も……おれも、自分が創作しているとは気づかなかった。あなたによって見方を変えられていたからだ」
と言われたときの痛みを想像すると、おれは瞑目するを否めない。
お前、今更、被害者面とか……
ねーよ、と、おれが女帝なら言う。ああもう、言ってやりたい、折木君に今すぐ言いたい。
しかし女帝が口にするのは、別の言葉だ。
「違うとは言っていない」
女帝はがっかりもしたろう。しかし、それ以上に、寂しかっただろう。
女帝を糾弾する、少年の論証の堅牢さも、また頼もしく。
明らかに、彼は、彼女と似ている。
彼の怒りも、また、彼女のそれと似ている。

折木君が怒っていたのは、自分自身にだ。
「なぜザイルのことを忘れていたのか。解答に合わせて、問題を捻じ曲げていたのか。おれが」
そう。彼は、事実を捻じ曲げたのだ。
何よりそれは、本郷さんの数少ない肉声だったのに。それは、彼女の残した「悲鳴」だった筈なのに。
折木君は、それを無視し、忘れ去った。
言わば、古典部で勝手に文集のタイトルを変えてしまうみたいな真似だ。
彼の勘の良さは、女帝の依頼を忠実に聞き取りすぎてしまった。
女帝の企みの片棒を担ぎ、古典部の面々を置き去りにしてしまった。
そうやって彼は、本郷さんを見捨てた。
本郷さんを心配し続けていた千反田さんも裏切った。
そんな自分が、許せない。
自分は「氷菓」というタイトルに込められたメッセージに、真っ先に気づけた人間だった筈だ。その意味が、本当に誰も分からないのか、と怒った。その自分が、なぜ。

おれの想像だが、女帝だって、好んで冷徹だったり非情だったり、謀を巡らしたりしているわけではないだろう。
しかし、必要なら躊躇わない。
たとえ、誰かを傷つけるとしても、だ。
女帝のやり口を見ていると、どうやら皆が少しずつ傷付く結末をめざしているようだ。
誰かが傷付かなくてはいけないのなら、皆で少しずつそれを分け合う。
それはひょっとしたら、誰か一人だけが、悲鳴もあげられず生きたまま殺されていくような事態を回避する、一つの回答なのかもしれない。確かに、今回、本郷さんは、悲鳴を上げることが出来たのだ。聞きつけて助けてくれる女帝がいたからだ。
それでも、可能なら、誰一人傷付かない、そんな結末を、本当は女帝も夢見るのかもしれない。
それが出来ない自分の技術の未熟を。だれがどの程度まで傷付くかを、選んで振り分ける自分の傲慢を。女帝はひとり、恨んで、悔やむのかもしれない。
そんな自分が許せない。
折木君のその痛みを、女帝はわがものとして感じるのではないか。
それが我が物であればこそ、その重みが分かる。ひとりで背負うには重すぎる。
まだ自覚も未熟な少年が、はじめて自分の技術がもたらした結果に気づき、おののいて、取り乱し。それを誰かのせいにしたいと思ったとしても無理はない。
おれに言わせれば、「あなたによって見方を変えられていたからだ」とは、言いがかりもいいところだ。自分の物の見方くらい、自分で確立させておくもんだろ。
しかし、それは大人の理屈だ。彼は、高校1年生に過ぎない。まだ幼い。その柔らかい背骨にこの責任は重すぎる。彼が悲鳴を上げている。
それが悲鳴なら、女帝は、耳を傾ける。
 
そして、女帝は、全編を通じて、初めて、ウソをつく。
「心からの言葉ではない」
全て、私の責任だ、と。君はただ、騙されただけだよ、と。
折木君が思わず漏らす「安心しました」という台詞を聞きながら、おれは思う。そうだ、安心したまえ、折木君。ひとえに、君のその安心のためにだけ、女帝はウソをついたのだから。
 
折木姉の本によれば、女帝のタロットの意味は「母性愛 豊穣な心 完成 収穫 女性的豊かさ 成熟した女性」だそうだ。
おれは想像する。折木姉と入須冬実はかなり親しい様子だし、ひょっとしたら「女帝」の通り名は、折木姉の命名だったかもしれない。
日本語で「女帝」という単語は、例えば戦争好きのエカテリーナ二世とかのイメージとくっつきやすい言葉で、侵略的支配的な権力者、みたいな印象を与える。
供恵お姉さんは、その美貌や能力の優秀さによって、入須冬実が、後者のおそろしげなイメージで受け取られがちなことを分かっていて、あえてダブルミーニングのあだ名を付けたのかもしれない。
何となく、供恵さんはそういう皮肉を楽しみそうな人、みたいなイメージをおれはもっている。
 
おれの予想の唯一当たったところは、今エピソードの「悲鳴もあげられず、生きながら死んでいく犠牲」枠が、女帝ではないか、というところだけだが。
いや、それ当たってるの? 当たってる、って言っちゃう?
そもそもそんな枠あるのかよ。
まあいい。とにかくあたった訳です(断言)
ただ、何の犠牲かという予想は、だいぶ外れた。
おれ、最初は彼女自身の技術・才能の犠牲、と思ったんだよね。
でも、第11話まで見終わって思うのは、彼女はすんごく人が好きなんだということ。それも彼女が「技術」と呼ぶ、能力、資質、才能、そういうものがどうも好きで好きでたまらないらしいということ。
曹操孟徳タイプ?
だから、ある分野で技術がある人なのに、それが生かされず、苦手な分野で酷使されて、傷付いたり自信を失ったりとか、そういう悲劇を、ものすごく憎むようである。
彼女は、見たいのだろう。全ての人が持てる力を十分にふるって、自他ともに満足出来る成果を上げるところを。そして全ての人が、みんなで、できたってばんざいするところを。どうしても見たい。
恐らく、そこが、最後まで姿を見せなかった本郷さんを、入須さんが助けた理由だ。
本郷さんは、その点で入須さんの同志ともいえたのかもしれない。「まったくお前ってやつは本当に」と思わず送信してしまう入須さん萌。
しかし、その女帝の生き方は、皆のために自ら犠牲となっていく道だ。
女帝の悲鳴は、誰が聞くのか。
 
第11話ラスト近くの、折木姉と入須さんのチャットのやりとりがいい。
『奉太郎のバカめ』とお姉ちゃんは思ったろうな。女帝の罪悪感を、増やしてどうする。
罪悪感を減らす方法はいくつかあるが、折木姉の取った方法はエレガントだと思う。
先輩という立場や、PCチャットという媒体を考えると、ベストだろう。
叱責。
入須さんが後ろめたく思う点を明確化して、穏やかに叱ってあげるのだ。
確かに、本郷さんの脚本は、不十分だった。しかも全然未完成だったみたいだし。女帝が「ダメだコリャ」とボツにしたくなったのはその通りだろう。
この脚本と、2-Fのスタッフの悪ノリ、これは遅かれ早かれ破綻する。女帝はそう思って、自分が乗り出すべき時期を待ったのだろう。
しかし、そのことに気がとがめてもいた筈だ。
なぜ、破綻を待つのか。それを未然に防ぐ努力はしなくていいのか。
おれが当初想像したように、これがクーデター的なニュアンスのこもった企画なら、女帝が途中から介入するのは困難だろう。下手な干渉がかえって感情的な反応を起こし、プロジェクトの失敗に直接つながるかもしれない。
しかし、それでもなにか方法は無かったか。
いや、ダメだ、結局、あの脚本では話にならない。抜本的に手を入れる必要があって、そのためには。
「私はあのプロジェクトを失敗させるわけにはいかない立場でした」
そうだ。仕方が無かった。これがベストだった。
だが、それは、いいわけだ。
いいわけでいい。
それが、女帝の悲鳴なんだ。
ムキになって、いいわけが言える。
そんな相手がいる。
女帝には、そんなことが、救いなんだ。
「あのバカはそれに気付かなかったみたいだけど」
 
折木姉がログアウトしたのは、故意か、事故か。
果たして、女帝のいいわけは、届いたのだろうか。

« アニメ「氷菓」感想 第11話「愚者のエンドロール」その1 | トップページ | アニメ「氷菓」感想 "Why didn't she ask EBA" + 第11.5話「持つべきものは」 »

アニメ・コミック」カテゴリの記事

氷菓」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アニメ「氷菓」感想 第11話「愚者のエンドロール」その2:

» 氷菓 第11話 「愚者のエンドロール」 [北十字星]
氷菓 限定版 第2巻 [DVD](2012/07/27)中村悠一、佐藤聡美 他商品詳細を見る  ザイルが使われていないことに気付いた伊原摩耶花。 そして奉太郎が考えたトリックは、本郷の考えが見えないことを...... [続きを読む]

« アニメ「氷菓」感想 第11話「愚者のエンドロール」その1 | トップページ | アニメ「氷菓」感想 "Why didn't she ask EBA" + 第11.5話「持つべきものは」 »

無料ブログはココログ

twitter