アニメ「氷菓」感想 第9話「古丘廃村殺人事件」第10話「万人の死角」
球磨川先輩キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
人気投票直前にキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
恥知らずにも良い人ぶってキタ━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
手ブラジーンズ表紙公約キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
手ブラジーンズで買収とかもう、ほんと最低ですね。球磨川先輩大好きです。
ていうか、今日も一応「氷菓」の話ですよ。10話まで視聴したところで、書いてます。以下ネタバレ全開ですのでご注意のほどを。
くどいようですが、ミステリ仕立ての本編について、致命的なネタバレがあります。ご注意下さい。
いやはや、先の展開の予想などするものではない。いい恥をかいた。
おもっくそ、空振りしてしまった。けど、外して爽やか。
いい。とても面白い展開だ。
そうだよね。やっぱり、折木奉太郎は、主人公なんだよね。
自信が持てなくて、自虐的なほど自分を貶めるかと思うと、次の瞬間、有頂天になって増長する。そして現実にぶち当たって、また自信喪失する。
青春ものの、絶対に外せない王道展開じゃないか。
たっぷりと千反田さんに興味を振っておいて、今回もその話だと思わせておいて、ごつんと超王道の少年の成長物語を骨太に描く。プロの芸とはかくあるべきだと思った。
おれはこれまで、「氷菓」をあたかも少女マンガを読むような気持ちで見ていたよ。折木くんが、ヒロインを助け出してくれる王子様に見えていた。
ちがうんだ。折木奉太郎は16歳の高校一年生で。となりのクラスの少女のことはおろか、まだ自分が何者かさえも、しらないのだ。
しっかし、沢木口先輩が2-Fの議事録を出してきたときには、もうこれは絶対に2-Fのクラス内政治の話になるのだと思いこんじゃったよなぁ。
また、江波さんがシナリオ持ってくるじゃない?
画面にシッカリ「死体」発見のシーン部分の描写が、読めるように映ってさ、おれ画面静止させて熟読しちゃったもん。やられたよ、あれが全部、ミスディレクションか。
あのシナリオには、倒れている海藤君は「腕をひどく傷つけられています」とだけ書いてあって、「腕が切断されています」とは一言も書いていない。
凶器やその使用方法を決定する受傷の描写は重要だ。腕が切断されているような極端な状況を、「ひどく傷つけられている」だけですますだろうか? それ以外の描写はとてもきめ細かいのに?
第九話で中城に向かって、折木君が「あのシーンはアドリブだった、と?」とわざわざ念を押しているのは、腕の切断された死体は、脚本の意図を外れていた、ということを強調しているんだろう、とおれは思っていた。
さらに劇中でも触れられたけど、「窓の外に足跡がないように注意」という脚本の記述を「撮影班で助監督」だったはずの中城先輩がしらない。「ホンゴウが書き忘れたんだろう」で済ましてしまう。
更に、羽場先輩に至っては、完成した分の映像のチェックさえしていない。「気を利かせて」勝手に血糊の量を指示と変えてしまう。勝手に、切り落とされた右腕を丁寧につくってしまう。
つまり、スタッフはそれぞれ自分の勝手な思い込みで気まま放題な仕事をして、他の人間の仕事に注意を払っていない、ということなのではないか。三谷幸喜の「ラジオの時間」的な制作過程が目に浮かぶようだ。
女帝は「ホンゴウはきちんと勉強して、矛盾の無い脚本を書いた」と保証した。
確かに「脚本」はそうだったかもしれない。でも、出来上がった「映像」は?
おれは、第九話までみたところでは、多分、折木君はそのあたりのことを指摘して、女帝のこの「ウソ」を暴くのだろう、みたいな予想をぼんやり立てていて。更に、そうして古典部のメンバーをいわば騙してまで巻き込もうという、女帝の真の狙いに切り込んでいくのかな、とか思っていた。
だから、前回は先走って、女帝の真の狙いとはなにか、みたいなことを一生懸命想像しようとしていたんだけど、まさか、今回のエピソードのテーマが、折木君の青臭さを描くことにあったとは、全く予想していなかったなぁ。
今、女帝の「ウソ」と書いたけど、実は、女帝は何も嘘をついていないのかもしれない。
ホンゴウは確かに勉強して、フェアに手がかりをきちんとまいた。結果的に、それらが映像に反映されなかったのだとしても、それはホンゴウがアンフェアだということではない。
第10話で折木君に「君は特別だ」と言ったのも、やはり嘘ではなかったろう。
折木君が理解したのとは違う意味だったかもしれないし、折木君が、そのようにずれた意味で受け取ることも計算済みだったかもしれないが、あの時点で、彼がこの映画制作プロジェクトと女帝を救いうる特別な存在であったのは、本当だ。
それに、折木君が補完したストーリーは確かに面白い。彼に、ある種の技術があるのも、やはり嘘ではない。
三先輩のアイディアは、確かにアイディアとしては、面白い。どのストーリーでも、これはこれで受ける映画になりそうだ。
ただし、ちゃんと完成できれば、の話。
三先輩の案はいずれも、技術的困難がある。
羽場先輩案のようなロジカルな展開は、よほど手際良く状況を見せなければ、わけがわからなくなるだろう。そんな鮮やかなカメラワークや演出力が、2-Fの撮影班にあるか?
中城先輩案のドラマティックな筋書き、例えば名指しされた犯人がよよと泣き崩れ、みたいなクライマックスで、どの出演者に「泣きじゃくりながら事情を話す」演技力があるのか。
沢木口先輩のホラーストーリーは、一番大変じゃないか。特殊メイクだのVFXだの必要になる。物語の後にいくほど、派手な残虐シーンを作らなくてはいけないんだぜ。
それらに比べて、折木案の圧倒的な実現可能性はどうだ。既に撮られた映像は、ほとんど手直しの必要が無い。
俳優が素人だからついカメラを意識してしまう視線も、カメラマンが素人だからただ俳優を追っかけてしまうだけのカメラワークも、もはや欠点ではない。むしろ、重要な手がかりとして意味を持ち始める。
何より、高校生が文化祭で発表する素人映画にぴったりマッチした、効果的なトリックでは無いか。
これがプロの商業作品だったら、へたくそなカメラワークは不自然過ぎて、すぐに劇中人物が自分たちを撮ったという設定なのだ、と察しがついてしまうだろう。単なる「ブレアウィッチプロジェクト」のエピゴーネンになるだけだ。
しかし、高校生の作品だと思えば、そういう稚拙さは、目についてもとくに意味があるとは意識しない。観客はむしろ、あえてそういう拙劣さを無視しようとつとめるだろう。発表状況をミスリードとして利用するとか、猛烈に気が利いてる。
まさに、万人の死角である。
これこそが折木君の才覚なのだ。
現時点では、多分、女帝しかその真価を理解していない。
折木君自身でさえ、自分の能力を名探偵のそれだと誤解している節がある。だから、第10話のラストで伊原さんに「ザイルが出てこなかった」と指摘されて「ああっ」とか驚いてしまう。
でも、それはちがうよ、伊原さん。分かってないな、伊原さん。
まあ、おれも最初、折木君の推理聞き終わったときには「折木! ザイル! ザイル!」と、ドリフのコントにツッコむがごとく、夢中で声を上げてしまったさ。
しかし、女帝が握手を求めるころには考えが変わっていた。
何故、ザイルを出す必要がある?
羽場先輩が、そう言ったからだ。しかし、それ以外にザイルの存在を示す根拠は?映像の中に、手がかりはあったか?
ない。一切無い。
女帝は「映像内に手がかりはある」と保証したのだ。羽場の意見を取り上げるなら、その大前提を否定することになる。
そんなこと以上に、鴻巣先輩が登山部なのも、ザイルを用意してあったのも、羽場が裏方だから知ることが出来た、裏話だ。そんな情報を本筋に持ち込むなんて、フェアとかアンフェアとか以前の問題だ。推理のインサイダー取引だ。
羽場先輩はまるでミステリファンであるかのように振る舞うけど、とてもそう思えないほど、この点、あまりにもマナーが悪い。
観客のことを考えるなら、むしろ、そんな情報は無視しなくてはいけない。ザイルとか、突然出てきたら観客ポカーンだろ。羽場案却下の理由がまた一つ。
想像だけど、多分、ホンゴウさんの脚本は、大筋では羽場案の通りで、犯人は鴻巣にするつもりだったのかな、とは思う。
廃劇場を指したのも、見取り図を見つけたのも、鍵を見つけたのも、その鍵を全員の前においたのも、鴻巣だった。海藤が、素直に自分の目の前に置かれた鍵を取るのを見てから、鴻巣は自分の鍵を選んでいる。計画にはめる、とまでいかないけど、誘導していたといえる。ザイルの件もあるし、一番怪しい。
しかし、その殺人現場が、ホンゴウさんの予定を覆した。6人の中でも一番屈強そうな男子が、その片腕を切断されてしまったのだ。これって並大抵の殺人じゃない。
じゃあ凶器は?
その使用方法は?
多分、用意していたアイディアが全て使えなくなった。そして、既に撮られてしまったそのシーンを、新しく物語に組み込む発想もわいてこない。そうでなくても、慣れないミステリものなのだ。
ここに至って、ホンゴウさんはキレたのだろう。それまでだって結構みんなの好き勝手に耐えていたのかもしれない。でも、モウヤッテラレッカと、ついに思った。
そこで思い出すのが第8話の冒頭。女帝とおぼしき人が、携帯メールをやりとりしている。その相手がホンゴウさんなのではないのかな。
ホンゴウさんって、キレても、怒れない人だったのかな、と思う。自分の能力を超えてしまった事態に対して、パニックになり、やたら謝りまくって、女帝に助けを求めることしか出来なかったようだ。
応えて、女帝はメールに書く。
「上手くいってもお前の望む方向にはならないだろう」
この時点で、既に女帝は、ホンゴウさんの原案を切り捨てている。明らかな矛盾があって成立しない、どうしても改変は加えざるをえない。
よけいな想像なんだけど、携帯メールの相手がホンゴウだとすると、他の人たちがPCでチャットなのに比べて、メアドを交換しあっている近い間柄だと示唆する演出なのかな、って思ったりした。やはり江波さんみたく、副官的な存在だったのかな。
女帝が事態の収拾に乗り出したのは、自分の親しい友人の苦境を救いたくて、という動機も強いのではないかと思った。
だとすると、映画の完成も勿論だが、ホンゴウさんを苦しめた連中に、一泡吹かせてやりたい、という気持ちも、あっても不思議ではない。
特に「素人のホンゴウ」と見下し、ホンゴウさんを最後に行き詰まらせた、腕切断の演出を可能にする小道具を作った男、羽場智博には、かなり含むところがあったかもしれない。
プロジェクトの梃入れにあたり、敢えて自分の選んできたクラス外の人間、それも下級生を連れてきて、新たなストーリーの練り直しではなく、あくまで「ホンゴウのオリジナルプロットはなにか」と問う理由はその辺りにあったのだろう。
まあ、そんなことはどうでもいい。
大事なのは、第8話の時点から、この映画はぜんぜんデタラメだったということだ。
ミステリをきちんと勉強した脚本家が十戒も九命題も二十則も守って書いたもの……から、かけ離れてしまっているということなのだ。
それは解かれることが予定されたパズルではなく、高校生たちの悪ノリと杜撰が積み重なっただけの得体の知れないものになっていた、ということなのだ。
それでも、折木君は、それを解いた。
解き明かされるべき真実が、全く存在しないところに、真実を見いだしたのだ。
いや、真実を創造した、と言うべきだろう。
これはすばらしい仕事だよ。おれは本当にそう思う。ほーむらん、と心からたたえたい。
確かに、探偵の仕事ではない。むしろ、作家の領域。あるいは、詐欺師や、政治家とかの仕事かもしれない。
女帝は嬉しかったろう。
「おめでとう。君はホンゴウの謎を解いたようだな」
ホンゴウの謎、とは、ホンゴウさんが用意した謎という意味ではなく、ホンゴウさんがとらわれて苦しんだ謎、という意味なんだな。
長くなったので、つづきはまた今度。
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コメント
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とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
投稿: 職務経歴書の書き方 | 2012年7月 3日 (火) 12時25分