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2010年7月19日 (月)

オーディンスフィア 二次創作小説 その10 グウェンドリン×オズワルド 「海の日」

夏ですな。暑いです。
暑いだけで、3割くらい減ります。いろいろと。




「かいすい……よく?」
耳慣れぬ言葉に小首を傾げて、グウェンジリンは問い返した。
まさしく小鳥の仕草に「うおぉぉかわええっ」と哮る胸中の奇声をおくびにも出さず、
「聞いたこと無いかい?」
オズワルドの応えはあくまで涼やかだった。

「読んで文字の通り、海辺で水浴びするんだ」
「海辺で、ですか……」
対して、グウェンドリンの表情は冴えない。
グウェンドリンの知る海岸線は、流氷の砕け散る故郷の岸壁、あるいは、妖精の魔弾をかいくぐって上陸する砂漠の浜辺である。
水浴びして心楽しい、という想像は難しい。
「タイタニアの南の地方や、リングフォールドでは、当たり前のことだよ。俺はこれまで、ほとんど毎年欠かしたことはない。夏の暑い間に、海水や日光に身体をさらすのは、気分がいい。それに健康にもいいんだ」
説明を続けるオズワルドの声はいつものように穏やかだったが、いつもより多弁な気がする。
━━なんだか……必死?
訝しむようなグウェンドリンのジト目を意識して、オズワルドの口調は更にうわずった。
「ここからなら、タイタニアの海水浴の名所もさほど遠くはない。君に見せたいんだ。南洋の、君の髪のようにしろがね色に輝く砂浜、そして君の瞳のような澄んだ青い空。透明な水を掻いて、海中へ身をなげだすとき、まるで魚となって空をおよぐようなんだ。あの海の中でなら、俺は君とともに飛べるだろう」
いつもながらのオズワルド節は快調。のように見えて、常の説得力がない。やっぱり違う。
と、我ながら思ってしまうのは、自分に何か疚しい思いがあるからなのだろうか、とオズワルドは自問する。
何も嘘は言っていないのだが。
故郷の夏を思い出す。妖精の国の夏。
陽気で遊び好きな妖精たちは、人間たちの風俗はどんなものでも遊びにしてしまう。もともと遊びのものなら、なおさら羽目を外して楽しむ。
海水浴はもともと、今はなきヴァレンタインの遺風と聞く。悲劇の王国、という印象が濃いけれど、往時は、日光と戯れる、開放的で闊達な国柄だったのだろうか。
しかし、妖精たちと、人間の習俗で決定的に違う点が一つある。
妖精は水着を着けないのだ。
そもそも妖精は、基本、全裸である。別に好んでそうしている訳ではない。
衣服が重すぎる。それだけのことである。
母胎から生まれぬ妖精は、肉を持たぬ。衣服の重さを支えることさえ、妖精にとっては魔法の一つなのだ。なぜか、生きものなら触れられる。どころか、人間なら二三人さらって空を駆けることもできるのだから、よく分からない。
オズワルドが魔剣の剣士に択ばれたのは、このせいもある。
常時、服をまとうのは、王族など、極端に魔力の優れたものの特権だ。戦場で命をさらすエルフキャスター達でさえ、胸や股間等の急所を、わずかに防護のまじないの込められた葉っぱで包むのがせいぜい。
まあ、それはいい。そういう生き物なのだ、彼らの罪ではない。
しかし、だからといって、無害とは言えない。
その妖精達の国で、少年期から青年期までを、たった一人の人間として過ごさなければならなかった、この男、オズワルドにとって、その影響は深刻だった。
もっとも平凡な妖精でさえ、人間の国にあれば、傾城の名を恣にするだろう美貌を備える。そういうきれいなおねえさんたちが、ことごとくすっぽんぽんで、きゃっきゃと笑いさざめきながら空中を漂う世界である。
しかも、その奔放は視覚の領域にとどまるばかりではなかった。オズワルドの身体に染み付いた死の気配は、聖騎士の一角獣どもには忌み嫌われたものだが、妖精の不良少女達には、かえって、他で替えがたい魅力と映っていた側面もあったようだ。
━━悪夢だ……。
思い出すだに、オズワルドの背筋を冷たい汗が流れる。
過剰な刺激への暴露に対して、新鮮な感受性を保ち続けるのは、極めて難しい。要するに「飽き」が来てしまう。
妖精たちはそれでいいだろう。本来性交を必要としない生き物だし、飽満や退屈とのつきあい方も心得ている。飽きを忘れてしまうための待ち時間にも、不自由しない。
しかし、人間はそうではない。
当時は、何も思わなかった。そういうものだと思い込んでいた。しかし、今となってはわかる。少年オズワルドが、人間として、人々の間で健全に暮らしていく為の、重要な何かが、蝕まれていた。
当時、ひたすら剣に打ち込んだ。脇目を振れば、自分が妖精たちの中に溶けて消えてしまうような心細さがあった。それはそれで、快美感はあった。楽しまなかった、と言えばうそになる。しかし。
今でも、初めて人の世界を見たときの衝撃は忘れられない。
メルヴィンから教えられてはいたが、庶人のひとりひとりまでが衣服を着こんでいる、その信じられないような光景。
しかも、ひとびとの容姿の、深みと変化の幅と言ったら!!
太った中年男性が、脂ぎった額の汗を手布で拭っていた。老女が杖をつき、震える足を少しずつ確かめるように運んでいた。ひょろりとした少年の生意気そうな顔に、一面にきびが浮いていた。
そしてその身に必ずまとう衣服。
衣服自体には驚かなかった。敢えて、頭以外の全身を覆うほどの装束を、日々優雅に着こなしてみせて、魔力の誇示をしていた伊達男に育てられたのだ。メルヴィンほどの着道楽、人間界でもついぞ見かけないほどだ。
そういうことではなく。
妖精と同じく美と楽しみの為の衣服も多かった。しかし、人間にとって衣服の理由はそれにとどまらない、寒暑をしのぐ為、礼節や秩序の為、人間が服にこめる意味と感情は様々で、分かりやすいものもあれば込み入ったものもあって、オズワルドはその一つ一つに驚き、楽しんだものだ。
その中で、どうしても、よく分からないものがあった。
特に若い娘たちの、わずかに裳裾の翻るのにも慌てて抑える、あの動揺は何だろう。
翻したくないのであれば、しっかり縫い止めればいいものを、と思いつつ、彼女たちの赤らむ頬が、なにか印象的で、意味深く思われた。
━━それは『羞じらい』というものであろう。
メルヴィンに話すと、彼はカフスの位置を気にしながら、興薄げに教えてくれたものだ。
人間たちは自分たちの醜い造形を羞じて、姿形を隠したがるのだ、とはそのときのメルヴィンの解説である。
なるほど、それも一面の真実かと思ったが、なお得心が行かない。
いや、無論、「羞じらう」少女たちの内心も謎だが、それ以上に、おのが心の裡にこそ、その情景に揺り動かされる何物かがあるのが、なおいっそうに謎であった。とても、メルヴィンが説明したような、不用意に醜怪な肉体を見せつけられたが為の動揺とは思えない。むしろ、どちらかと言うと感動に近い……こう、なんというか、クるのである。
いまならば「着エロ」という表現をかりれば、或いはその傾きに近いだろうか。チラリズムという概念も、ある部分で代弁できるかもしれない。
しかし、オズワルドの生きた当時、そのテイストはあまりに先端的であった。それは、彼の生育環境のみが醸成しうる、孤高の境地であった。
オズワルドが、自身の感興の起伏をはっきり意識したのは、そう、タイタニアの、海水浴の習慣を知ってからだ。
厳密に言えば、水着という衣服の存在を知った時からだ。
人間たちは、水浴びするのに、わざわざ布を身体に巻き付ける。
ばかばかしい、と最初に話にだけ聞いたときには呆れたものだ。布は、水を含めば重く、身体にへばりつき、手足を絡めとる。水中では手布一枚、帯一本が凶器になりうるのだ。無意味という以上に有害ではないか。
しかし、彼は、ある夏、その目で見たのだ。
少女たちが。常ならば、くるぶしが顕われても取り乱す乙女たちが、赫々たる陽光の下で、膝頭まであらわにして、その身体の輪郭を、はっきりと黒い影に落として、白い砂浜から切り取っていた。衆人環視の中で!!
いつもの偵察行動の途中だったオズワルドは、その黒い鎧が、周囲の海水浴客の好奇の視線を集めていることにも気づかず、呆然と立ちすくんだ。
水中での運動を拘束しないためのデザインなのだとは、無論分かる。しかし、なんなんだ、それだけとは思えない。
水に濡れて、変わる色彩、深まる質感。透けそうで、透けない。その布地の緊張、或いは、たるみ。身体の線に沿うようでいて沿わず、そのかたちをあからさまにするようでいて、隠す。
おまえらは見せたいのか、見せたくないのか。どっちなんだ!!
打ち上げられた深海の甲殻類のように、じりじりとその装甲を灼く陽光の下、身じろぎもせず、オズワルドは声なきツッコミを入れていた。
その薄い布の下に、確かに丸みが、ふくらみが、或いは滑らかなくびれが、確かに存在して息づいているのだ、と、感じられた。迫真の、いや真実を超える表現力であった。おそらくあの娘たちが、もしあからさまに全裸であったなら、むしろここまで生々しくはないだろう。全裸美女に慣れたオズワルドには容易に想像することが出来た。
もはや周囲の視線が好奇を通り越して、危険物を見る目つきになってくる頃になっても、それでも目を離すことが出来なかった。
衣服恐るべし。水着恐るべし。
鎧の襟元からムンと立ち上る自身の汗の臭いに圧迫されながら、脱水気味の朦朧とした意識の底で、オズワルドは悟った。
━━これが、俺の小鳥なのだ……。
(つづく。わけがない)



というわけで未完です。
続きを読みたい人はコメント欄にワッフルワッフルと(ry
ひさしぶりのオーディンスフィアですが、こんなんで済みません。
ちょっとコメディみたいなの書きたかったんだけど、無理でした。根がまじめなんですよ、おれ。
この後、この日のために密かに自らデザインし、縫製した水着を最愛の妻にどうしても着てもらいたいオズワルド様と、夫の下心を全く想像できないグウェンドリンと、実は結構気持ち分かっちゃうんだけど、しっかしマジ引くわー、みたいなミリスさんと、三者の微妙な攻防がくりひろげられる水着選びとか、そんなこんなの末にようやく浜辺まで辿り着いたら、なぜか、火の国の王が半裸で耳障りな関ボイスの高笑いで待っていたりとか、そういう展開考えていました。
けど、めんどくなったので止めました。暑いし。
オズワルド様の無駄な深刻さが書けたので満足です。

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コメント

もう読みました いいですね

序盤はシリアスなのかと思いきや……笑いましたw
オズワルドが大真面目なのが余計に腹にくるw

いいblogですね
読んでしまいました
ありがとう

この記事へのコメントは終了しました。

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