Fate/stay nightの話の続き その5 遠坂凛
凛って。
起源はやっぱり「ツンデレ」だよね、みたいな、今となってはそのジャンルの古典となりつつありますが。
ツンデレはその定義からして、言行不一致、二律背反、矛盾と葛藤で出来ている生き物な訳ですが、確かに凛はその点デタラメに矛盾だらけで、不動の日本代表ではないかと。川口並みに。
今日は、例によってネタバレ全開で、凛の矛盾と葛藤と否認の魅力について書きたいと思います。
これまでまともに自分の子供の頭もなでたことがない父親、永久の別れになるかもしれない朝に、7歳の娘に親らしい言葉をかけるでもなく出かけていってしまう父親を、「人格者」「娘を愛していた」と言い張るプロローグからして、凛の、自分に都合の悪い事実は絶対に認めない、という魅力が炸裂していて最高です、と思っていることは、こないだ書きました。
このテンションは本編に入っても、いっこう衰えません。
この娘さんは、どこまでも自分の見たいものから目をそらさない。だから、それ以外のものは、どんなにまざまざと突きつけられても、目もくれないんですよ。そこにしびれる。あこがれる。
例えば、アーチャーや士郎の生き方を、「空っぽ」で「自分を勘定に入れていない」と言いだしたりする。
え、だって「自分の命を犠牲にしても正義の味方を張り通す」とかさ。こんな贅沢、こんなわがまま、こんな身勝手、普通ないよねぇ。むしろ「自分のことしか考えてない」というのが、より正確な表現だと思うですよ。
凛が本当に言いたかったことって「心配する方の身にもなりなさい」「本当に自分勝手なんだから」って意味なんだと思うんだよね。
でも、凛は、そうは言えない。
どうしてなんだろうか。
おれは想像するんです。
もし、凛が、そこで士郎の中に身勝手を見つけてしまったら。同時に、凛自身が意地を張り通す身勝手さを見いだしてしまうからではないか。
いや、ちょ、まてよ。
「世界はとっくに私のものだわ」と断言し「足りなければあるところから持ってくる」と勇ましい、遠坂凛は、やりたい放題し放題、魔法のマンボかよ。とばっちりを食らう桜のうつらみつらみ、共感せざるをえないですよ。
一見、自他ともに認める「身勝手」な遠坂さんが、どうして自分の身勝手さを認めたがっていない、なんて想像しちゃうのよ、おれ。おかしくない?
いいや。おかしくない。
凛は自分の身勝手さを、本当の意味で身勝手だとは認めていない。当然の権利で、フェアな勝負だと、思っている。いや、思おうとしている。自分の生き方が、避けがたく誰かを傷つけてしまうということを、ことさら軽く考えようとしている。
もし、そこで、凛が、自分が傷つけた誰かのことを考えてしまったら。例えば、桜を心配してしまったら、どうなるだろう。
では、10年前、父親に頭をなでてもらいたかった女の子は、心配して上げなくて、いいのだろうか。
父親に笑ってもらいたくて、密かに練習したジョークを、ついに伝える機会のなかった7歳の女の子を、ほっておいていいのだろうか。
そんな子を、古ぼけた洋館にたった一人残して、親として思いやる言葉もなく自分の仕事のためにだけ生きた父親を、どう考えればいいのだろうか。
おれは、想像するんです。凛はそこで、どうしても、父親、遠坂時臣を恨んでしまうのではないか。そして、その怨念こそが彼女が絶対見まいとしているものなのではないか、と。
断じて、父、時臣は身勝手ではなかったはずだ。自分を、娘を、愛していたに違いないのだ。だから、自分は傷つかなかった、はずだ。父の生き方は魔術師として、適切だった、はずなのだ。
自分や、士郎が、おのが信念のために、自分を愛し、案じてくれる人の気持ちを踏みにじるような生き方をしても、それが父親の生き方に少しでも重なる以上、少なくとも、身勝手とだけは、絶対に責めることは出来ない。だって、身勝手ではないのだから。
っていうか、今書いてて、凛って凄くイリヤっぽい気がした。
気のせい?
イリヤと切嗣の関係と、凛と時臣の関係は、ダブる気がする。
父親に傷付いている。自分を捨てて顧みなかった父親に傷つけられて、その痛みから、サーバントに癒しを求めている感じも、なんか似ている。
バーサーカーとアーチャーはその辺が似ている。
そっかぁ。HF編で闇に飲まれたバーサーカーが、士郎に、視線だけで後事を託す。UBW編で、アーチャーも「お前が倒せ」と、目で告げる。おお。
なるほど、士郎の立ち位置も同じなんだ。凛にとっても、イリアにとっても。
そうだ、凛も、イリアも、ルートが無いところも似てるよね。
UBW編って、てっきり凛ルートだと思っていたのにさ、アーチャールートだったじゃない? ってゆっか士郎ルート?
バーサーカーがどこまでも、イリヤの忠実なサーバントだったのに対して、アーチャーはなぁ。
アーチャーは、衛宮士郎を英霊にするために来た。っていうのはおれ設定ですけども。
まあ、なんにしろ、アーチャーにはアーチャー自身の目的があって、凛のことは、中心ではないんです。UBW編で、その事実が情け容赦なく突きつけられる。
この感じ。
凛は、士郎の自問自答の中で、最後まで脇役なんですよ。
凛のモノローグに始まって、やはり凛のモノローグに終わるこの物語、凛はどこまでも語り部であって、決して彼女自身の問題は語られない。
この感じが凛らしさなんです。ここがおれは凄い好き。
まるでグレンラガンのヨーコさんみたいに、物語から放り出されて、無視されている。しかし、凛の場合は更に過酷で、語り部だから、自分の世界に引きこもって田舎の小学校の先生になったりとか許されない。
どこまでも自分を避けて通る物語の、それでも中心に立って、見届けなくてはいけない。
「世界ってつまり自分を中心とした価値観でしょ? わたしはとっくに世界を支配しているわ」
そう、彼女の世界は彼女に支配されているのだから。
誰も、彼女を支配してくれない。彼女の肩に負う運命の重荷を分かち合い、ともに歩み、ともに嘆き、ともに苦しみ、そして。
同じ目の高さで微笑む人は、いない。
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もう見ました ありがとう
投稿: Fate stay night同人誌 画像 | 2010年10月28日 (木) 16時19分
That is well known that money makes people free. But how to act when somebody has no cash? The one way is to try to get the http://goodfinance-blog.com/topics/mortgage-loans">mortgage loans or just car loan.
投稿: WilsonFannie35 | 2012年2月17日 (金) 00時37分