Fate/stay nightの話の続き その4 アーチャー
アーチャーが聖杯戦争に参戦する目的が「過去の自分を殺すため」なんて信じらんないですぅ(おれだけなんだろうなぁ)、という話の続きです。
例によってネタバレに全く容赦ありませんから、ご注意。
じゃあ、何しに来たんだよ、アーチャー。ってことですが。
それでさ、おれは想像するんです。
激しく自分を責め、後悔する、アーチャーの言葉、前回も書いたけど、やっぱり嘘ではないと思う。その後悔と自己否定は、多分ずっと、アーチャー=エミヤの中にあった。
いや、今、ここにある。
今、この現代、第5回聖杯戦争を戦う、少年、衛宮士郎の中にある。
「正義の味方は、救おうと決めた人しか救えない」
アーチャーに突きつけられるその「真理」を、士郎は切嗣の言葉として回想する。
アーチャーに指摘されるずっと以前から、その「事実」を、彼は知っていた。
士郎が摩耗した果てに、その「結論」が出てくるのではない。
士郎が士郎として生まれでてくる、それこそが「発端」だったのだ。
ただ、士郎はそこから目を逸らし、耳を塞いでいただけ。
Fate0を読んでいないおれは、切嗣がどんな人かほとんど知らなくて、stay/nightの描写から好き勝手な想像をしていたんですけども、hollow atalaxiaをやってて、さてこそ!と例によって妄想的着想に膝をたたいて納得したものです。
おれの想像では、切嗣は第4回聖杯を壊したのではない。
第4回聖杯によって、自らの願望を叶えたのだ。
つまり、正義の味方になることと、その後継者を育てること、という願望。
そう、冬木市街を焼き、人々を殺したのは、聖杯破壊の余波などではない。その殺戮こそ、切嗣の願望だった。その火の海の中で、一人の子供を命がけで救う自分を、切嗣はねがった。
そして。
叶った。
救われた子供も、その願いの一部。
切嗣を「正義の味方」と信じ、愛し、そのあとをアヒルの子のように忠実になぞる。切嗣の願った通りの後継者。
つまり衛宮士郎の存在こそ、願望機としての聖杯の顕現そのもの。
すなわちアンリ・マユそれ自身に他ならない。
すみません。誤読済みません。生まれて来て済みません。
誤読は続くよ。どこまでも。
願望機アンリマユの化身である士郎は、だから、その誕生……出現?の発端から、切嗣の願望、というか世界観を強烈に刷り込まれていたんだろうな、と。
おれは想像しているのです。
人々の願望、欲望を全て背負う存在として祀られるアンリ・マユ。人間たちの欲望はしばしば排他的で、貪欲で、確かに悪といって良かったかもしれない。それらを抱えたまま生きていくには、人々はあまりに弱い。
誰かが悪を抱えていってやらなければいけなかった。
全ての人が、おのが心の裡の小さな善に気づき、育んでいけるささやかな日なたを作るために。
天を覆う、息詰まるような悪を全て、誰かが集めなければいけなかった。
悪が逃げ出さぬように、全て飲み込まなくてはいけなかった。
目に映る全ての人の平安のため、この世の全ての悪を背負ったその少年は、だから、そのためにこそ、人間のあらゆる醜い側面にだけ触れ続けることになった。
そう、それは、まさにアーチャーが語る、英霊の絶望。
それは、英霊エミヤとして体験したことばかりではなかったと想像します。
むしろ、もっぱら士郎として生まれる前のアンリ・マユとして。そして、願望機聖杯として、柳堂寺地下の大空洞で、繰り返されるおぞましい聖杯戦争の術式の中心となり続けていた間に、まざまざと見せつけられ、体験していたことだったのでは。
さらにさらに、おれは脱線して想像しよう。
その中で。
あらゆる人々のおぞましい、よこしまな、身勝手な願望を、永劫の過去から投げこまれ続けてきた中で。
アンリ・マユにとって、切嗣の願いをかなえることは、嬉しかったのではないか、と
たとえ切嗣の願いが、無数の救われない犠牲者の存在を前提とするものだったとしても。
それでも、救われぬものを、救いたい、という切嗣の願い。
数多くの犠牲に取り囲まれ、ただ一人生き残った責任に自身を責めさいなまれながら、それでいて全く事態を変える力を持ち得ない、ただ無為に歯ガミして絶望のうちに死んでいくしかない、無辜のツミビトを。
すなわちアンリ・マユを。
エミヤを。
士郎を。
切嗣は、救いたいと願ってくれた。たった一人、切嗣だけが。
士郎が、アーチャー=己自身に問われて、アインツベルンの城で見いだす答。
切嗣に救われたことが嬉しかったのではない。自分を救った切嗣が、思わず顔に浮かべた喜びを。
美しいと思ったのだ。
美しいと思ったから、憧れたのだ。
そして、それが憧れになったとき、切嗣の願いではないんですよ、もはや。
美しいと思っているのは、士郎。他ならぬ士郎=アンリ=エミヤ(どこの国の人?)の憧れ。
他人の願望機だった、アンリ=士郎=エミヤ(順番変えてみた)の、しかし、これは、これだけは、混じりけなく本物の、自分自身の答。
エミヤが来たのは、このためだと思ってます。
何億分の一、何兆分の一、いやそれ以上に有り得ない、この世全ての悪だった筈の自分が、正義の味方として再生する希望。
なんて想像を繰り広げていましたよ、誤読乙。ということで。いやー、馬鹿だねー。
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もう見ました ありがとう
投稿: Fate stay night同人誌 画像 | 2010年10月28日 (木) 16時30分