踊ってよ、シャルル
お久しぶりです。
などと挨拶をしても、読んでくださる誰かがいるとも思えませんが。恥ずかしながら帰ってまいりました。
「私もブログとかいうものをやってみようかと思うのだが、ホームページなどとは、また違うものなのかね?」との穏やかな老紳士の御下問に、「どうしておれに訊くのだろう」と、内心の違和感に戸惑いつつ応える社会人としての日々の一コマで、あ、「そう言えばおれもブログらしきものやってなかったっけか」と思い出したりする。そんな平和な毎日です。
いやー。
ずばり浮気してました。すんません。
相手の名前はモンスターハンターポータブル2ndG。
すごいゲームですね。傑作です。
以上。
うん、本当に書くことないぞ。MHP2Gには、オーディンスフィアの優に5倍以上の時間をつぎ込みました。それでもまだG級に届かないヘタレっぷりで、たぶんまだまだ遊ぶと思う。
でも、なんにも書くことがない。
ちっとも書きたくならない、ってこと自体が、実に興味深いですな。書かずにはいられないようなゲームと、はまってても全然それについて語る必要を感じないゲームと、何が違うんでしょうかね。
ここはオーディンスフィアのブログってことなんですけど、今回は違うこと書きます。
しかし、コンテンツ整理したいなぁ。
オーディンスフィアについて書きたいことは残っているんだけど、ほかのこともいろいろ書きたい。いつかオーディンスフィア部屋とかちゃんと整備します。したいです。したいなぁ。できるといいんだけどなぁ。
今日書くのは、標題でピンと来た人がいると思うけど、「とある飛空士への追憶」の話。
以下、例によってネタばれ全開、全くの遠慮容赦なしです。進む場合は自己責任でお願いします。
おれ、結構ラノベが好きです。
ガガガ文庫という比較的新しいレーベルがあって、前から気になっていたんですけど、その中でなんか評判のいい作品らしいということで、初めて手に取ったのが、この「とある飛(ry」。
面白かった。素晴らしい傑作です。(注)あくまで個人の感想で、効能効果を証明するものではありません。
そんな事より、ちょいと聞いてくれよ1よ。スレとあんま関係ないけどさ。歩いていけるような近所にイタメシ屋があるのに気がついたんで、こないだうっかり行ってみたんですよ。ミネストローネスープ頼んで、一口含んで、おどろいた。
ミネストローネなんて、勿論、初めて食べたわけではない。なんか、いろいろ野菜が煮崩れていて、混沌とぼんやりしたうまみが大雑把にトマトでまとめられて、みたいな、味のイメージがあったわけですよ。
それが、その店のスープは、一つ一つの野菜の味がはっきりして、それでいてやさしくお互いを響かせ合っていて、こんなもの食べたことがない。しかも、やっぱり、どう食ってもミネストローネだとしか、言いようのないスープなわけです。
あやまれ。ミネストローネスープにあやまれ。脳内のニコ動をそんな文字が左から右へ流れていきます。
こんな近所にこんなスープを出す店があったのか、とか、まさか自分の舌にこんな味の感受性があったとは、とか、いろんな驚きで混乱して帰ったものでしたが。
「とある飛空士への追憶」(以下「る空の」)の読後感も、まさにそんな感じ。
骨太、王道のストーリー。誤解を恐れずにぶっちゃけると、「ありがち」と言っていい物語。「古臭い」とさえいえるかもしれない。それこそミネストローネスープのように定番。
「ローマの休日」+「アフリカの女王」みたいな、と言えばオールドムービーファンなら「ああハイハイ」とすぐ頷けるでしょう。
この物語の締めくくりの二行が、自身を要約して無駄がない。
「歴史にその名を刻んだ偉大な皇妃と、歴史の闇に消えた名もない飛空士。
ふたりが織りなす、ひと夏の恋と空戦の物語である。」
ここだけ読んで「こんなお話かしら」とぼんやり空想してみた、そこのあなた。ハイ、それたぶん9割以上正解です。
一歩間違えば、陳腐な凡作に堕すプロット。ただその、描写と構成力、文章の精度を上げることにしか、物語の生きのびる道がない。
すごい。すごいぞ。作者の名前は犬村小六。よく頑張った。犬村小六は勇者である。その王道を、よくも逃げ出さず歩みぬいた。うまいんですよ。キャラの立て方、アクションの展開、描写力、小物の使い方、どこをとっても。プロの筆力に素直に感激しました。
その精密さと堅実さが、作中の主人公に、重なってくるのが、またいいんです。自分の乗る偵察機よりも、格段に高性能の戦闘機14機に追尾・包囲を受けるシーンがある。
「溶岩色をした曳痕弾の束が周囲を行き交う。その只中を愚直なまでにひたすら横滑りの回避運動で耐えしのぐ。この動きだけでいい。この動き以外を決して選択するな。」
自分に言い聞かせる主人公、狩乃シャルル。その単調な繰り返しに不安を感じて、別の動きをすればすぐ撃墜される。それと知っても、際限のない回避運動の繰り返しにひたすら集中し続ける困難と恐怖。しかし。
「基本に忠実でいられる強さがシャルルにはあった。」
基本に忠実。ちっくしょう、かっこいいなぁ。なるほど、犬村小六は基本に忠実である。かっこいいよ、この小説自体が、さ。
基本に忠実な、骨太本格空想冒険小説です。あるいは直球本格純愛小説です。人に勧めまくりたいと思います。
とまあ、おれはこれの本が気に入ったわけだけど、そこは実は、別に書きたいところではなくて。
これって、ラノベじゃないよね? ってことを言いたいのですよ。長い前フリだな、オイ。
おれは最初は、さっきも書いたように、ガガガ文庫をラノベレーベルだと思って、ラノベを期待して買ったつもりだったわけです。
それが、こんなさぁ。本格派の冒険小説で。カラー口絵でアニメ顔の美少女が白ビキニでなまめかしい曲線を披露していたりするから、すっかり騙されたよ。ハードカバーでやれよ。せめてハヤカワJAとかさ。
さっき「ローマの休日」とか言ったけど、「と空士」もどこの50年代に出しても通用しますよ。80年代の宮崎駿をサモンしてアニメ化させたい。いや戦前のキャサリン・ヘプバーン(オードリーに非ず)の主演で実写化するのもいい。要するに、どの時代、どこの国でだって、上質なエンターテインメントとして通用しちゃいそうだよ、って。
おれは、ラノベ、結構好きなんです。
ラノベという呼称も頭悪そうで好き。なんつうか、ラノベ読む感じって、おれ的には、一昔前なら昼間っから女郎屋の二階で泥酔するみたいなイメージ? 沈殿というか、耽溺というか。現実逃避という以上に自己破壊的、堕落、破滅的っていうか。小畑健的絵柄のクールさでかっこいいわけですよ。
そこで「と飛憶」ですよ。
これって、ラノベなのかなぁ。
その疑問の前提には、ラノベってなにか、って問いがあるわけだけど、それに答えるとしたら、おおまかに二つやり方があると思う。たとえば「挿絵入りの文庫本」みたいな、物理的測定に依拠する「客観的」な答えを持ってくるやり方と、「おれの中ではこう思う」みたいな「主観的」な、要するにそれはラノベ論じゃなくて「おれ語り」でしょ、みたいなやり方と。
ここでは勿論、俄然後者の道を進みたい。すいません。生まれてきてすみません。
ラノベというジャンル呼称は「おれの中では」言い訳なんですよ。ま、おれの中での話なんですけど。「ラノべなんだから勘弁してあげて」みたいな空気で、普通に大人向けに書いたものなら、冷笑失笑大爆笑みたいな、イタイというか恥ずいというか、そういう展開や設定もせいぜい「ニヤニヤ」程度で許してもらおう、とそういう下心がラノベという自称なんだと、勝手に思っています。
だから、廚二病的な、最強、無敵、絶対、永遠、そんな形容詞の飛び交う設定とか、朴念仁男子が無自覚にモテまくるとか、奇跡の起こりまくるバトルとか、そういう、痛々しい自己愛と、力への渇望が描かれているのが、おれ的ラノベなんです。そういうの大好きです。
で、「る飛追」ですよ。
だから、そういう意味では、この本はラノベじゃない。おれとしては「サブカルから出て行け」と言いたいくらいの気持ちになったり。
なんでこんなラノベみたいな擬態したんだろう。その方が売れるからというのもあるんだろうけど。
でも、ひとつ思うのは、ラノベ風味の装丁のおかげで、先の展開が読めなくなって、どきどきしましたね。
作品の美しさを考えたら、定石的には、主人公とヒロインは、結ばれない。そこをいかに切なく悲痛に描けるかが、そして、同時に誇らしさや、ある種の希望を、美しく香らせることができるかどうかが、職人の腕の見せ所になる。
でも、ラノベだったら分からない。すっごいご都合主義的展開があって、二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ、みたいな甘アマ展開になっちゃったらどうしよう、みたいな。これが普通にハードカバーだったら、そんな心配、絶対ありえないですよ。最後まで手に汗握りましたね。
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