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2008年7月12日 (土)

オーディンスフィア 二次創作小説 その9 グウェンドリン×オズワルド 「指輪」

お久しぶりです。

更新は実に二カ月ぶりという体たらくですが、にぽぽだいです。

気がつくと、記念すべきオーディンスフィア発売一周年も、当ブログ開設一周年も遠く過ぎ去り。何やってんだか。

それなのに、いつ間にか、40000hit以上をいただきまして。誠にありがたく、恐縮しております。今後ともよろしく。

初心に立ち返り、グウェオズSSです。

お目汚し失礼いたします。

舞台は辺境の古城のほとり、「ワルキューレ」6章62節。

 



 

ただ、黄金を丸く輪にしただけ。

としか思えぬ、素朴な、金色の小さな指輪。

——ティトレルの指輪。

気がつけば、いつの間にか再び立ち止まって、左手のそれを見つめていた。

 

コルドロン。

世界を揺るがす魔の竃。

その扉を開くたった一つの鍵。

——とてもそうとは見えぬ。

その、簡素だが品のいい指輪の径は、明らかに女性の指の為のもの。とても、小さくて、かわいらしい。

——あの子には、それでも大きすぎたようだったけれど。

妖精の国の、新しい女王。

父を。

いや、あの、魔王オーダインを、打倒したと聞いた。それも、隠れもなき戦場で、尋常な一騎打ちで、地を這わせた、と。

——いかな女丈夫かと思っていたが……。

小さな、かわいらしい。

子供だった。

妖精だから、ああ見えて、グウェンドリンの祖母ほども年経ているのかも知れない。しかし、これまで見えた中で、あんな繊弱な敵手はいなかった。

 

ため息を一つついて、再び歩き始める。先を急ごう。

オズワルド様に早くお見せしたい。

……城へ戻ったら、まず、なんと言って、声をおかけしたものだろう。

思い出す。最後に見たオズワルドの、白い後ろ姿。

静かに、ただ、静かに、グウェンドリンの寝室を歩み去っていった。

振り返ることも無く。

ああ、一体、自分は何を思って、あの方の下された指輪を、父の元へ差しだすなどという真似が出来たのだろう。

悔しさと情けなさで、食いしばる奥歯が軋んだ音を立てた。

あのときの、オズワルド様の少年のような肩の線。かつて見たことが無いほど、悄然と落ちていた。あのとき、彼のシャツの下にあったのは、傷だ。グウェンドリンの為に、竜と戦って負った傷があったのだ。

私の為に、傷つき続けた方なのだ。

もはや、許されぬかもしれない。私を見つめ、私が喜ぶ顔を見たいと、おっしゃって下さった、あのためらいがちな微笑みは、もう、二度と私に向けてはいただけないのかも知れない。

声にならぬ溜め息のように、グウェンドリンはうめいた。

自分はどうして気がつかなかったのだろう。あまりにも貴重なものが、すぐそこに。まさに抱きしめられるほどの傍近くに、あったのに。なんと愚かだったのだろう。

……でも、恐ろしかったの。

怖かったのよ。

だって……だって、あのお父様なのよ?!

立ち止まって思わず辺りを見回してしまう。追っ手を警戒するように。あるいは、援軍を期待するかのように。

イルリットの森は、静かだった。午後の木漏れ日が、柔らかく砂金の輝きを道に散らしていた。とおく、穏やかな鳥の声がする。

道端の、愛らしいヤマブキに目を落として、グウェンドリンは力なく呟いた。

——だって、あのお父様なのよ……。

竜の血液によって得た不滅の体躯。更に、三賢人をも凌ぐ魔法の力。世界最大の魔石バロールを振い、幽冥の境を踏み越える。

そして、その力を振るうことに、容赦も逡巡も無い、非情。

実の娘であろうと、己が覇権の為には、見捨て、だまし、利用しておいて、恥じることの無い。むしろ、その上首尾を誇りさえする。

——誰が逆らえると言うの……。

ティトレルの指輪を、それと知りながら、王から隠し持って居られるだろうか。

ぶるっと震えた身体を、グウェンドリンは自分で抱きしめた。王を思い出すだけで、冷たく、暗い、ネヴュラポリスの王宮の空気に包まれる心地がする。心なく冷えた石積みの回廊。人の吐息を、温もりを、吸い込んでしまう。ただ、鉄甲と鋲の擦れ合う金属音だけが、どこまで追いかけてくるように響いていた。

……誰が……逆らえる、と……?

……。

——いや。

知らず閉じていた瞳を、グウェンドリンは開いた。

日差しの中で、ヤマブキが揺れていた。

あの、妖精の少女の髪の色。

——あの子は。

立った。

一人きりで、砂漠で、正面から、あの魔王に挑んだという。

その恐ろしさを、自分ほどに分かるものは居ないのではないか、とグウェンドリンは思う。

あの、翅の翠色の美しい、妖精の幼い女王を、何がそこまで駆り立てたのだろう。

——あの子にとってオーダインは母の仇。

あの子の母と戦場で出会った。妖魔と罵って穂先を突きつけた。

その美貌、威厳、圧倒的な魔力の気配。わずかに接しただけだが、その印象は忘れ得ない。女王と呼ばれるのに相応しい、あれは偉大な敵だった。

あの新女王は、その母の死を看取ったと聞く。

オーダイン王が、その母の仇だ。

——お母様……。

母の仇。

……。

自分の母も。姉も。あの男の氷のような心根に踏み躙られて死んだ。

あの、異国の異母姉さえも、見捨てられた。

そして、自分も。

グウェンドリンの指輪を填めた左手が、胸の前で、白く血の気が失せるほど握りしめられた。

誰一人、救いはしない、あの男。

あの男にとって……世界中の誰もが、おもちゃの兵隊以上ではないのだ。

息が苦しいように感じて、胸を左拳で押さえると、ひどく鼓動が早まっていることに気づく。

——まさに魔王。

あの男を、あの子供が。

細い腕と、薄い胸と。そして、目尻が下がり気味の大きな瞳を思い出す。

このティトレルの指輪さえ、大きすぎたのだろう。あの子は、指に填めては居なかった。倒れた拍子に懐から転がり出た。

——怪我をしただろうか。

倒れて動けないあの子の目の前で、自分は指輪を奪った。

母の仇から命がけで戦いとった指輪を持ち去られても、あの子は、動けなかったのだ。

彼女の宮殿の中のことだ。魔法に詳しい妖精の国でもある。命に別状あるとは思えない。

しかし。

あの小さい子供が、母の死をみとり、一国を背負って立ち、あの魔王に戦場で立ち向かおうというそのとき。

自分は何をして居たろう。

諾々として王を疑わず。その魔法に身を委ねて、眠っていた。

目覚めて後は、オズワルド様を裏切った。

そして、今、オーダイン王との戦いの疲れも癒えぬ幼い女王の、不意を襲って、指輪を奪った。

——私こそが。

敗れて死ねば良かったのだ。

そうだとも。今更、この指輪を持って、私はどこへ帰ろうというのだ。

オズワルド様。

そう、オズワルド様は、たとえそれでも、きっと私を迎えて下さるだろう。私を許し、むしろ喜んでさえ、下さるかもしれない。

だが、私はそれでいいのか。

私の敵は、倒すべき相手は。本当に、あの少女だったのだろうか。

何をやっているのだ、私は。

小刻みな震えを抑えられない、固く握りしめた左拳を、指輪ごと、胸に抱きしめるように右腕で抱えて。グウェンドリンは、歩き出せない。

いつも、いつもいつも。痛めつけられるのは、他の誰かだ。

私の為に。

私が、ひとり私だけが、打ちのめされ、傷つき、果てれば、それで済むものを。

幼い妖精の女王も、オズワルド様も……姉様も……姉様達も。自分の犠牲だ。ブリガンさえもそれに数えていいかもしれない。

なるほど、あの将軍は不潔な卑劣漢だった。その王は、酷薄な魔王であった。それは確かなことだ。

しかし、では、この身はなんだ。魔王の娘に相応しくも、おぞましいほどに身勝手な、魔女ではないか。

彼らを傷つけ、辱め、殺して。それで自分のしたことは、ただ、自分を守る、それだけでしかなかった。それほどに一体、自分に値打ちはあるのだろうか。

オズワルド様、なぜ、貴方は、私の為に竜を討ったのですか?

なぜ、炎の国の王に、誓いを立てられたのですか?

私は、オズワルド様を恋している。恋い焦がれている。当然だ、それが魔王の呪いだからだ。

では、オズワルド様は、なぜ?

なぜ、私などのために、それほどまでに?

——ただ、君の喜ぶ顔が見たいんだ。

穏やかな彼の声が耳朶に蘇る。

あの方と過ごした、ほんの僅かな時間。だけど、それは、いつも、静かで穏やかだった。

あの方の贈り物だったのだ。

この指輪だけではない。あの静謐さが。平穏が。それを蔑ろにする自由さえもが。

一方で、彼が望んだのは、たった一つ。

——待っていてくれるかい。

ただ、それだけだったのに。

……もうダメ。

耐えられない。

なぜ、あのような方と、こんな形で。

——君は物なんかじゃない。

いや。

やめて。

——君は物なんかじゃない。

お願い、もうやめて。

——君は物なんかじゃない。

やめて!!

私は、そんなこと望んでいない。望んだことも無い。

そんな風に優しくしないで。

私に命じて。私を責めて。私を踏みにじり、引きずり回して。

——君は物なんかじゃない。

お願い……やめて……お願いだから、私のせいではない、って言って……

あの方が、ブリガンのような男だったら。炎の国の王のような男だったら。

お願い。私を大事にしないで。

私にはそんな値打ちはないのよ。

オズワルド様の前では、どんなに自分がずるい嫌らしい女か、思い知らされる。

そうよ、私は、物ではない。全て、私が、自分のこの手でしたことだわ。

逝く姉の託した槍を使って、王国を裏切った。

オズワルド様からの贈り物を、台無しにした。

そうよ、全て私がそう望んだこと。

なんて身勝手な、汚らわしい女。

そう。

そうよ、私は物ではない。

——私は、物ではありません。

そうだ。

炎の国で、あの厭わしい炎暑の国で。

私は彼の王に向かって、はっきりそう言った。いや、獅子のように、吼えた。

どうしてだろうか、私は、あのとき。

声に出して、オズワルド様の言葉を繰り返した、あのとき。

——誇らしかった。

自分の仙骨のあたりから丹田へ突き抜けた異様な昂りの感触。まざまざと覚えている。

それは、自分自信の有罪を弾劾する宣言だったというのに。全ての言い訳を、情状酌量を、反古にしてしまう、最後の命綱を自ら断ち切ってしまう、そんなことだったのに。

でも、一瞬で、絡み付く全ての枷が、檻が、粉微塵とはじけとんだかのように。

自分は解き放たれた。

そのとき、かの半裸の王は、ぶよぶよと滑稽な筋肉をおののかせて、怯えたものだわ。

私は物ではない。

私が望み、私が行った。

私の悪事は全て、私のものだ。

私の苦痛も、私の懊悩も、私の悲惨も。

すべて、私のものなのだ。もはや、他の誰にも分け持ってはもらえない。

いや。

——分けてなどやるものか。

私の、この呪わしい恋も。

オズワルド様。

別の形で、お会いしたかった。

たとえ、それが殺し合いになったとしても、もっと、私を……こんな父の人形ではない私で、お会いしたかった。

でも、それでも、今のこの気持ちが、父王の魔法に始まるものだとしても。

今や、この恋は私のものだ。この思いは、私の血の一滴、私の肉の一片までにしみ込んで、もはや切り離すことなど出来はしない。

切り離そうとも思わない。

もう、何もかも構わない。間違っていても、狂っていても、おぞましくても、卑しくても。なりふり構わぬ。今のこの瞬間の自分の気持ちの為だけに、何でもしよう。父を騙し、弑逆するとも、天地の理を枉げるとも、いかなる恥をも忍び、あらゆる罪をも敢えて犯そう。

私は、それでも、もはや、物ではないのだから。

オズワルド様。早く、お会いしたい。

ついに走り出したグウェンドリンの胸の内で、ある空想が翼を広げて、彼女は、ふと、ほほを赤らめた。いくらなんでも、それは有り得ない。

でも。

思い描いてしまうのだ。

自分とオズワルド。もし、二人の間に、魔王の呪いが無かったとしても。

やはり、自分は、彼を、愛したのではないかしら、と。

ばかばかしい。ばかばかしい。こんな愚かしい空想に耽るあたりが、まさしく呪いなのだと思う。以前の自分より、数段、頭が悪くなった。

しかし、何度ばかばかしいと唱えても、グウェンドリンは自分が確信しているのに気がついていた。

 



 

おしまい。

読んで下さって、有難う御座いました。

 

山吹ってのは日本の花らしいんで、イルリットの森にはないでしょうけど、まあ、イメージ的に、あんな色の花ということで一つ。

今回から、SSにナンバリングしてみました。まだ9本目だって、すくなっ。

以前のSSも遡って番号つけようと思っているんですけど。

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コメント

ここの小説、くどい上に最悪です。以後OSの二次創作はしないで欲しい。あなたの小説はいったい何の妄想ですか?まったくわかりません。オリジナルなら他でやってくれませんか?

くどい小説もどき。

初めまして。獅子舞と申します。
いつもOSの二次創作楽しく読ませていただいています。
本来ならばあまりコメントしないのですが、前のコメントがあまりにひどいものでしたからつい…乱文でしたら申し訳ないです。

唐突ですが私、ここの二次創作、大好きです。たまにグウェンドリンが愛のあまり暴走するところも面白いです。
特に「湯化粧」と「侯鳥」が気に入っています。互いに想い合っていて、それでも少しずれているがゆえの不安な感覚。切なさが胸にしみます。
あまり語るとこちらが暴走しだてしまいそうですが(笑)
次にどんな鳥オズの創作を見られるのか、楽しみにしています。

それでは、乱文失礼致しました。

はじめまして、獅子舞さま。にぽぽだいと申します。
温かいコメントありがとうございます。勿体ないお言葉で、光栄に思います。とっても嬉しいです。
 
「前のコメントがあまりにひどい」と書いてくださったのは、サハラさまのコメントのことでしょうか。
おれ自身は、正直、サハラさまの意見の方に賛成、というか。おれの美意識に照らせば、おれの書いているものは「くどい小説もどき」としか思えない。ほめてくださった獅子舞さまの前で、申し訳ないけども。
 
ただ、素人のブログって、そういうものではないかしら、と。
もちろん、無料で拝見するのが申し訳ないくらいの完成度のサイトさまは実在します。ここでリンクお願いしているサイトさまとか。
でも、ウチは違います。
獅子舞さまはじめ、好意的なコメント寄せてくださる方にしても、「まあ素人のブログだと思えば」というフィルター越しでやさしく見てくださっているのだと思います。
そういう素人の道楽に、真面目にコメントされるサハラさんの意図が、ちょっとわからない。リアクションに困るというか。
 
サハラさんが、深く傷ついたり、とても御不快だったりしたのではないか、と心配しています。
それがおれの書いたものによるのだと思うと、ひどく申し訳ないとも思います。
ただ、その原因がおれなのだとしても、責任の取りようがない。
おれもネット徘徊してて、不快なものが目に入ってしまった経験があります。しかし、それは明らかに、地雷を踏みに行ったおれの責任だ。ネットに接続するって、自己責任でそういうリスクを負う、ってことでしょう。
要するに一言でいえば「厭なら見るな」ってことです。
変かな。おれの言っていること。結構、常識だと思っていたんですけどね。でも、常識ではなかったようで。どうしたもんか分かんなくて、困っちゃって。
それで、ノーリアクションで様子見てました。

初めまして、mameと申します。
いつもここのオデン小説が大好きで(というかオズグウェが大好きで)、更新してないかな?と覗きにきています。

この話のコメントを見ているうちに、普段は見る専なのですが無性に書き込みしたくなってしまいました。

個人的な感想を申し上げますと、管理人さんは本当に文章能力に長けたお方なんだなと感心しています。
なかなかここまで人を引き込ませる小説はあまりお目にしたことがありません。
特に主人公の心理描写が択一だなぁと思いました。

そのような才能をお持ちで、羨ましい限りです(^^

今やオデンはブームが過ぎた感もありますが、まだまだ私にとっては忘れそうにない素敵な作品です。
またここの小説を見て更に思い入れ深くなりました^^

これからもお体に気をつけて、たまにはこのブログのことも思い出してやってください~
影ながら応援しています^^

mameさま、初めまして。
にぽぽだいと申します。大変な御過褒にあずかり、もーてれてれです。ありがとうございます。もっとほめて。
おれは、その後もいろいろ乙女ゲーとかラノベとか、趣味に生きている訳ですが、オーディンスフィアほどにストライキングな逸品も、なかなか見られない。並の乙女ゲープリンスより王子度高い、ってオズワルド様って一体。まだまだ書きたいことはいっぱいあるんだけど、じゃあ書けよ、みたいな。
おれはどうも潔さとは無縁の生き物なので、多分ずるずると、ときどき更新したり、しなかったり、しなかったりで続くと思います。もし気が向いたときにでもおいでいただけたら、幸いです。
では、また。

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