2020年9月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

最近のトラックバック

@ゲーム

  • FFxiv
    FFXIV PROF
  • ぺたっとセルフィ
フォト

他のアカウント

« オーディンスフィア 二次創作小説 その7 グウェンドリン×オズワルド 「小鳥の境地」 | トップページ | 拍手お返事10 »

2008年2月16日 (土)

オーディンスフィア 二次創作小説 その8 グウェンドリン×オズワルド 「古城」

えーと、またSSです。

SS連打とは珍しいです。自分でもびっくり。

お目汚し失礼いたします。

舞台は辺境の古城、「ワルキューレ」361節と2節の間。

オズワルドが、グウェンドリンに目覚めのキスをした、まさにその瞬間から、というイメージで。

 



 

目覚めると、最初に目に入ったのは、見慣れた天蓋だった。

ああ、もう、朝かしら。

ふわり、と柔らかく、風がほほをなぜる。緑の色濃い匂いがした。

眠い。というか、だるい、というか。頭が重い。すっきり目が覚めない。再び目を閉じる。

グウェンドリンにはあまりないことだが、なんだかぼんやりして、今日の予定が思い出せない。

長く長く眠っていた。そんな感じがする。

でも、その間、夢を見ていた。たくさんの夢を。そんな感じもする。眠っていたはずなのに、疲れがある。

でも、そんなに嫌な夢ではなかった。……ような気がする。

誰かが……自分を見つめていた。静かに。それでいて、熱く。

誰だか、知らない人。

夢の記憶で良くあるように、生々しく印象を思い出すのに、具体的な細部は皆目。もう少しで掴めそうで……いや、やはり消えてしまう。

その人の、まっすぐな視線を、はっきり思い出すのだけど、でも、瞳の色さえ、分からないのだった。

思い出すと、何か切ない。

なんだか怖い夢だったような気もしてきた。そんな風に、誰かに見つめられたことなどない。

王家の威光も、ワルキューレの武名も貫き透して、グウェンドリンの肌身にまで届くような、その視線。

……いや、でも、やはり、そんなに怖くない。

ううん、怖い。

怖いんだけど……怖いけど、でも、嫌ではなかった。

あんな風に、誰かをみつめる。その人は。

どんな思いがあるのだろう。何を望み、何を願い、何を欲するのだろう。

彼の人の望みとは……私なのだろうか?

ばかばかしい。所詮は、夢の話じゃない。

なんだか、胸のあたりが釈然としない。でも、それを無理にも押し込めて、グウェンドリンは自分に命じた。起きなさい、ワルキューレ。ミリスを呼ばなくては。姉様にまた、からかわれてしまう。

━━ねぼすけの小鳥が今頃顔を洗っているわ。

歌うように節をつけた、小憎らしい姉様の声が聞こえるようだ。ちょっと癪に障るけど、自分をからかうときの楽しそうなグリゼルダの声が、グウェンドリンは好きだった。

ミリスを呼ぼうと、息を大きく吸って。

━━優しい……妹……

思い出してしまった。

━━泣いてくれるの……?

砂礫にまみれた、朱鷺色の翼。

夜の色の、凛々しい瞳が、急速に光を失っていくのを。

そうだ。姉様は、みまかられた。私の、この手の中で、小さく、冷たくなっていかれた。

流氷の浮かぶ故郷の海に叩きこまれたかの様に、凍りつかんばかりの現実が、グウェンドリンの五穴からなだれ込んできた。

あの日、姉様は砂漠で亡くなった。

そして、もう一人の……姉。オーダイン王の不義の娘。

そして……私は、その異母姉の命の為に、ブリガンを弑して……。

━━王の娘とて、罰は免れぬ。

そうだ。

そうだった。

グウェンドリンは、歯を食いしばり、目を開いた。

見慣れた寝台の天蓋。

その向こうには、石造りの、見知らぬ天井が広がっていた。

 

長く動かなかったせいか、魔法の眠りの後遺症か。体を起こすだけでギシギシ骨身が鳴るようだ。

何とか上体だけでも立てて見回すと、古風なラグナネイブル式の城郭の一室と見えた。大きく壁が切り取られ、バルコニーが突き出している。ツタの絡まるその手すりの向こうに、ひろびろと森と、そして……ネビュラポリスが遠く。今まさに黄昏の中に溶け行こうとしていた。

ここはどこだろう。ネビュラポリスと夕日の角度から推すに、おそらくはイルリットの森の辺り。そういえば、タイタニアとの国境に、やや時代遅れの古城があった筈。あれか。

等と、目算つける自分を嗤う。今更、場所など。ここがたとえ死の国だろうと、火の国だろうと、何も変わりはない。自分は最早、ワルキューレではない。花瓶の生花、籠の鳥。

気づけば、身につけているのは、慣れた鎧ではなく。これは、母様の。

鎧が剥ぎ取られているのは当然だと思う。自分はもうワルキューレではないのだから。しかし。

━━何を色気づいておる!!

父のいかにも不興げな叱責がまざまざと思い出される。あれほどに不快を示した服を、今は、あえて私に着せるのか。

ああ、確かに、私は、最早、ワルキューレではないのだ。

きりきりと奥歯が鳴る。瞋りに目の前が暗くなる。私の誇りも、武芸も、勲功も、なにもかも、もう、子宮の付属物にすぎぬということよ、グウェンドリン。

屈辱のあまりか、それともまだ完全に目が醒めきらぬせいか、グウェンドリンの感覚に常の鋭さがない。この時になって、ようやく傍らに何者かが佇んでいることに気付いた。

━━何者です!

居住まいを正して厳しく誰何する、つもりだったが、体が思うに任せない。声も出ず、物憂げに振り向くだけで、精一杯。

そして、その何かを見て、グウェンドリンは低く呻き声をあげた。身体の痺れがなかったら、身も世もなく悲鳴を上げたかもしれない。

その影は、黒かった。くろい。全ての希望を飲み込むように、くろい。凶々しく棘と鉤が群がり生え、手足の数も定かならぬ。乾いた血の臭い、むせかえるような死の気配がした。

怪物。

それ以外の表現は当てはまらない。

ギチギチと耳障りな金属音を立て、竦むグウェンドリンに、そいつは、のしかかるようにして、這い寄った。

と。

「目覚めたようだね。体が痺れているのかい?」

唐突に、低く涼やかな声がした。グウェンドリンに話しかけるかのように。若い、男性の声のようにも思えたが、どうも、目の前の怪物が発しているようだった。

目を上げると、銀髪の青年の、心配そうに覗き込む顔が見えた。

よくよく目が慣れてくるに従い、その怪物が、くろがねの鎧をつけた男なのだと見えてきた。人間が着る物とは思えぬ、分厚い金属の塊。年代と由緒のありそうな甲冑だが、無数の傷に覆われて、男が潜り抜けた戦歴を無言の裡に証していた。

しかし、男は若く、肌はまるで女か子供のように滑らかだった。すっかり鬚を剃ってしまっている。ラグナネイブルの習俗ではない。

その紅い瞳。

……見覚えがある。

黒い甲冑、赤瞳銀髪。

忘れもしない。姉様の果てた、あの砂漠で切り結んだ。この男が私を組み伏せ、その魔剣がまさに私の喉を切り裂こうとしていた。

私が初めて、後れを取った男。

「……貴……貴様は……」

「俺は、オズワルドという」

そうだ。知っているぞ。魔剣士。死神と取引したという、呪わしい男。

男……。

あ。

グウェンドリンはようやく気付いて、まじまじとオズワルドの整った顔を見つめ直した。

━━目覚めて最初に出会う男に征服され、誇りと名誉を奪われ、生涯仕えながら子を産み、老いていくのだ。

……この、男に!

この男にか!

選りにも選って、敵の戦士か。祖国のあだ、部下たちのかたき、そして。

姉様の。

姉様の血を吸ったあの砂漠で。この男が、我が軍兵の死骸をいくつ積み上げたことか。

「貴様っ!」

一声叫んで、絶句したのは、痺れのせいばかりではない。思いが猛り狂って言葉が追い付かない。殺意が視線を槍にするかとも思えた。

その視線を正面から受け止め、男は怯まなかった。

「ここはイルリットの森の古城だ。俺がオーダイン王より賜った。君も好きに使うと良い。必要なものはそろえよう」

丸腰とはいえ、魔女と恐れられたグウェンドリンの殺気を至近から吹き付けられながら、男は穏やかに言葉を続けた。端的に状況を説明する。

私を侮るか。グウェンドリンは鮫の口つきで笑った。面白い。貴様を迎える初夜の臥所が、そのまま墓所となろうよ。この歯で喉笛を噛み裂き、この指で両目を抉り出してくれる。

グウェンドリンの一部は、自分が男を憎み続けることが出来ることに驚いていた。父王の魔法により、抗いがたく心を操られるのだとばかり思っていたが、喜ばしい誤算だ。全てを奪われたが、怒りだけは去らなかった。我が最も古き友、憤怒よ。

男は言葉を切り、今にも彼を食い殺さんばかりの、花嫁のむき出しの敵意を、まっすぐ見つめた。

長い睫が、二回、しばたたき。彼が微かに首を傾げるのに合わせて、大きな瞳が、考え深げに、夕日の残照を集めてますます紅かった。

そして、冷たいほどに端正な彼の美貌が。

わずかに、ほころんだ。

 

━━っ!!

一瞬、グウェンドリンの思考が空白になった。ほんの一瞬だったが、戦場ならば致命的な隙である。

━━何事? 私は一体?

「ああ、良かった、本当に」

オズワルドが、彼女と目を合わせたまま、ほとんど囁くような声で言った。

グウェンドリンも思わず、息をつめて、聞き入ってしまう。

心からの深い祈りが、ようやく聞き届けられたことを知った者の、混じりけのない真摯な喜びが溢れる、声だった。

「君は、本当に、目覚めたんだね。良かった。オーダイン王の嘘ではなかったんだ」

意味の分からないことを言う。しかし、抑えがたい彼の喜びが、グウェンドリンの胸をも打つ程に、伝わってくる。

「……グウェンドリン」

ゆっくり、その名を、彼が口にした。

あ。

ぞくりと、背筋に何かが勃こり、そしてさわさわと全身に広がっていく。

━━しまった!!

次第に輝きを増すような、彼の微笑が眩しくてたまらず、グウェンドリンはついに視線を落した。

それでも、彼の視線を感じる。まっすぐ。王家の威光も、戦士の意地も貫き透すような。

━━やはり、魔法が……

心は操られていないと思ったのに。ぬか喜びだったか。

身体の痺れはもはや殆ど取れていたが、彼の視線を意識して、別の意味で、ぎこちなく体が強張ってしまう。やたら火照る。なぜか、頬が上気している。

何よりも、怒りが。憎しみが。途切れてしまう。空回りする。集中できない。

いや、だが、まだだ。まだ憎める。まだ怒れる。

おそらく、彼が近よるほどに、次第に染み透っていく術法であろう。

ならば、決着は急がねばならぬ。

何かをねじ伏せるようにして、グウェンドリンは、心中、固く誓った。

 



 

おしまい。

読んで下さって、有難う御座いました。

 

オズワルド様と言えば、シャツですよね。

ええ。(簡潔な自問自答)

でも鎧姿も素敵です。シャツからの着装シーンが欲しかったなぁ(瞬間全裸はおやくそく)

しかし、オズワルド様の鎧はトゲトゲで、いたそうですよね。永野護風?

大変悪役っぽい感じが、おれ的にヒットです。おれを見た奴は死ぬぜ、みたいな。

口づけされて目覚めさせられて、最初に見るのがあんな悪役コスチュームかよ、こえーよ、ってところからこの話を思いつきました。

« オーディンスフィア 二次創作小説 その7 グウェンドリン×オズワルド 「小鳥の境地」 | トップページ | 拍手お返事10 »

オーディンスフィア」カテゴリの記事

グウェンドリン」カテゴリの記事

オズワルド」カテゴリの記事

二次創作」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

« オーディンスフィア 二次創作小説 その7 グウェンドリン×オズワルド 「小鳥の境地」 | トップページ | 拍手お返事10 »

無料ブログはココログ

twitter