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2007年11月 9日 (金)

raw! raw! fight the power! ━天元突破グレンラガン━

オーディンスフィアのサントラと一緒に、グレンラガンのサントラも買ってきちゃったのですけど。ヲタ食わば皿まで。

というわけで何となくグレンラガンの話が書きたくなっているのです。さぼり続けで久しぶりの更新が、オーディンスフィアじゃないのかよ。はい違います。

うむ、堂々たるものだ。

というわけで書きます。そろそろほとぼりも冷めたかと思って。

最初に一言、言っておきます。

ごめんなさい。m(_ _)m

例によって、ネタばれについては全く配慮しておりません。後出しジャンケンの卑劣さ全開、評論家気取りでcoolにごお、ですよ。

ご了承ください。

 

いいよな「ラップは漢の魂だ」系の曲が。「Libera me from hell」まで含めてさ。

それにしても、かっこよかったな、アンチ・スパイラル。

なんたって声優が上川隆也ですよ。すげぇ豪華。おれ、ちっちゃい頃から好きな俳優です。目立ってハンサム、というんじゃないんですけど、昔、NHK朝の連続テレビ小説で、ヒロインが弁護士になる話があって。そこで、同僚でライバルでちょっと偽悪的なんだけど、実は熱血正義漢、みたいな、ツンデレ系ヒーローをやってらして。かっこよかったんだ、これが。秘めたる情熱、みたいな演技させたら、熱いぜ熱いぜ、熱くて死ぬぜみたいな役者さんですよ。

アンチ・スパイラルにばっちりはまって、超かっこよかったですよ。

 

考えてみたら、螺旋の力が進化と生存に適した宇宙の中で、螺旋が勝つのは当たり前。

それがスパイラル・ネメシスに行きつくとしても、なんつうかな、それが自然の流れなんでしょうね。宇宙の寿命?

どっかで聞きかじったんですけど、人間、生きていれば必ずどっかしらガンが出るそうですね。遅かれ早かれ。癌を完全に防ごうとしたら、癌になる前に死ぬしかないらしいですよ。本当なんですか? 誰か教えてください。

その話を思い出して。

どんな生き物も、生まれたら、いつかは死ぬ。形あるものはいつかは滅びる。スパイラル・ネメシスって、つまり、そういうことなんじゃないのかな。おれたちはいつか死んじゃうんですよ。

それが道理。

そう、道理なんです。でもさぁ。「形あるものはいずれ滅びる」、そう言って、従然と悟ったふりして、死んで行けはしませんよ、おれは。納得がいかない。なんとかしたいじゃないですか。たとえ、無理だとしても。

無理を通して、道理を蹴飛ばす。おそらく、全編を通じて、もっともスケールの大きい「無理」を押し通そうとしたのが、アンチ・スパイラルなんだと、おれ的には思っています。

まあ、実際、無理だったわけですが。

それでも、スパイラル・ネメシスを、確実に遅らせられたはずだ。

そして、十分に強力な、後継者を育てることもできた。シモンと大グレン団の皆さん。彼らは、具体的な方法論のレベルでは、反対の立場だった。でも、宇宙を救うという、そのただ一点において、同志である。真剣な批判者は、究極、味方ですよ。

 

いやぁ、しかし、おれも、座して死を迎えようとは思わないけど、でも、ぶっちゃけアンチ・スパイラルの方法では、死んでるのと大して変わらないんじゃないか、みたいには思います。進化や変化を拒絶するなんて。

いくら地球温暖化がヤバいから、って、アーミッシュみたいな生活に戻れません。っていうか、おれは嫌ですよ。主観的で済まん。やっぱ、やりたいことはやりたいよねぇ、みたいな。

つまり何が言いたいかというと、ただ生き延びるためだけに生きている、っていうのよりは、やりたいことの為に、まあ、いずれは死んでもいいか、と覚悟する在り方ってのも、ありではないか。

っていうか、本当の意味で生きる、ってのは、そんなことなんじゃないか、と。大風呂敷広げてみます。

役所広司の新作映画、「象の背中」ですか? まだ見てないんですけどね。コピーで「死ぬまでは生きていたい」って言うじゃないですか。

「生きる」と言えば、そのままずばりそういうタイトルの黒澤映画がありました。あれも、そういう話だったように思います。ひたすら無難に生きてきた市役所の課長。しかし死を鮮烈に意識した瞬間、それまでの漫然とした半生が、くっきりと生命の軌跡として意味を持ち。残された数か月が、生き生きと光芒を放つ。

 

生命は何よりも尊重されるべきか。

それとも生命を擲つほどの価値が、存在するのか。

中二病っぽい問いかけで済まぬ。でも、大事な問いだと思う。人間だれしも、みんなその問いを大切に持っているんじゃないか。世間で、戦争を扱う物語は、みんなそのテーマを持っている、ブレヒトやトルストイとかな、そう断言してもいいのでないかと思ったりしてもあながち的外れとは言い切れないという意見も捨てがたいなどと、いささか尻すぼみになりながらも敢然と主張してみたりするテスト。

グレンラガンが、その基本に立ち返った原点っぷりは異様なほど。

グレンを乗っ取るカミナが、髑髏を凝視する。動かないグレン、思い通りにいかない自分。かつて尻込みしてついていけなった父。その髑髏を、それと知らずに凝視する。髑髏も見つめ返す。ただ、鼓動と、呼吸だけが耳を圧する。いま、ただ、呼吸するためだけに呼吸する、自分の呼吸が。

分かりやすい、生と死の対比。この単純な構図を、上滑りさせない舞台づくりが、すげぇと思う。

このシーン、シモンがアンチ・スパイラルとの戦いの中で、スパイラル・ネメシスの事実を突き付けられて、叩きのめされる、あの構図に反響している。とおれは勝手に思ってるんですよ。

ますます、すげえ。

あの瞬間、シモンは初めて、カミナに並ぶ。大銀河グレンラガンとか言って、月ほどもあるアニメ史上空前の巨大ロボットを駆る戦いをしていて、でも、まだ兄貴の高みに追い付いていなかった、って。兄貴の描き方も、すげー。

カミナがグレンを乗っ取ったということは、本当にすごいことなんだな、ってしみじみ思いました。

誰もそんなことが出来ると思っていない。実は、やろうと思えさえすれば、結構出来ることで、カミナに出来たと知っただけで、人間のガンメン乗りが何百何千と登場してくるわけなんだけど。

でも、最初に、その限界に挑戦し。そして、超える。

その時見つめているのが、髑髏。まさに、限界状況「死」そのものと向き合うことで越えて行く。いいよ、この話。

で、シモンはアンチ・スパイラルと出会うまでは、カミナがその時背負ったような死への直面を知らない。「おれは兄貴にはなれない」と言いながら、結局、カミナのしたことの拡大再生産。

でも、この時、初めて知る。カミナの生き方が本質的に孕む自滅の運命。カミナの限界。

知って、しかし、さらに、もう一度それを選ぶ。カミナが、人の、父の限界を目の当たりにして、なお、もう一度それを選んで越えて行ったように。

ついに、カミナの達しえなかった領域へ、一歩踏み出す。兄貴のしなかったことをして、兄貴が成し遂げた未踏への挑戦を成し遂げる、この逆説。進化、って言葉の意味を、実に明快に示してみせる。

なに、この分かりやすさ。中島かずきの脚本は化け物か。

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