天元突破グレンラガン。もう一つ。
なんか、書き出したら止まらなくなっちゃった。もっかいグレンラガンの話。
例によって、おれの想像ですか?(訊くな)
こういうとき「妄想です」と謙る方がよくいらっしゃるんですけど、おれの場合、それを言っちゃうと謙遜じゃなくて単なるカミングアウトだからなぁ。
いや、何を言う。真に具合の悪い方は、病識なんかないのだ。おれは正常だ。正常なんだっッッ!!
いつものように、以下、ネタばれに全く配慮しておりません。ご注意ください。
それでね。おれ、実は、ロシウが好きなんですよ。
あのね、ほら、あの、「燃え」ですか? いわゆる一つの「燃え」要素?
あれ…なんか、こっぱずかしくない?
ごめんなさい、そういうグレンラガンが好きな人ごめんなさい。
逆境で「うおーっ」って叫ぶと、底力が湧きあがって、奇跡の大逆転というパターン。少年漫画の黄金パターンというか、お約束というか。火事場のクソ力ですよ。肉。
子供の喧嘩は、泣いてからが強い、って言うけども。
いやいや、おれも大好きですよ、そのパターン。いや、本当。ああ、そんなだったらどんなにか、いいだろう、って。いつも。疲れ果てて、打ちのめされて、悔し涙飲み込むたびに、本当に思って。漫画の中でくらい、その不可能を乗り越えたい。わかる。わかるよぉ、あああ。
でも、それはやっぱ、ちょっと、恥ずかしい。ねぇ?
好きだ。でも恥ずかしい。
「燃え」ってそんな感じ。すごくアンビバレント。
「俺を誰だと思っていやがる!」うっわ、恥ずかしい。
でも、言ってみたい。大声で言ってのけて、しかも勢いに乗って勝利出来たら気持ちいいだろうな。
でもでも、やっぱ恥ずかしい。熱くなっているその時は無我夢中なんだけど。後で思い返したら、自分のこと殺したくなるだろう。
Fate/stay nightのエミヤのアンビバレンス。
だから、最初の方は、恥ずかしさが勝って、見ていられなかったな、グレンラガン。
ほら、箒を剣や銃に見立てて、掃除の時間だってのにチャンバラしている男の子たちとか、小学校の時とかムカついたじゃないですか。「ちょっと男子!まじめにやんなさいよ!」とか、ツインテール揺らしながら人差し指突き付けて怒っちゃう、あの感じですよ。もう、ほんと幼稚なんだからっ。
まあ、おれも薹が立ってきましてね。そういう男子っぽさ、むしろ可愛いと最近は思うようになりましたけども。
しかし、思いが力になる、って設定は伝統的に大人気。
名づけて超能力とか魔法とか。気とか念とか波紋とかスタンドとか、小宇宙とかいてコスモと読んだりとかよ。いくらでも出てくる。
いや、おれもそういうの大好きですってばよ。ホントホント。強い想いが奇跡を起こす。いいじゃないっすか、最高キモチいいじゃないっすか。好きですよ。好きなんです、本当に。でも、そうカミングアウトするのは、かなり恥ずかしい。だって、ガキっぽいじゃん。男子っぽいバカさ加減? いや、男子かわいいよ?男子。
感情と現実が地続きだって発想は、やっぱ、弟とかそういう世代見てて「泣きゃあいいと思いやがって」みたいに感じてたことがあったけど、そういうの関係あるのかな。
泣きさえすれば、強い感情をぶつけさえすれば、周りがよちよちいい子でちゅねと阿ってくれる。思いが世界を動かす。魔法とか超能力とかほしいと思うのは、そんな幼児のころに戻って甘やかされたい、って気持ちなのだろうか、などと想像してみたり。
だとしたら、恥ずかしい、と感じるのも無理もない。いい歳して、なぁ。
うぉーっと叫んで、天から降ったか地から湧いたか、得体の知れない螺旋の力が、どこかから助けに来てくれると、無邪気に信じて待っているシモンとカミナの乳臭さ。湿ったおむつの感触に泣き喚いて、お母さんが取り換えてくれるのをまっている乳児の匂いがする。おむつを汚す、こげ茶の粥状まで、ミルクの匂い。
かわいいよね。抱きあげて頬ずりしたくなる。
でも、だからと言って、自分がもう一度おむつしてバブバブ言いたいかといったら、違う話。
ロージェノムとか、出てきたときはどんな悪者かと思ったけど、でも、実は、人類を守る傘となって、永劫、アンチスパイラルの圧迫に耐え続ける運命を、毎瞬毎秒、自ら選び続けている人だったわけで。
なんという勇気だろう。思わず居住まいを正す。
波に乗って快進撃するよりも、同じ状態を淡々と維持することの方が、遙かに難しいじゃないですか。試しに、自転車を走らせないで、倒さないように乗り続けてみたら分かります。
別に、そんな難題投げ出して、人類の責任は、人類自身に負わせればいい。あるいは、一か八かの挑戦にかっこよく挑んで、負けて死んだっていい。普通の人間はみんなそうやって生きている。例え逃げ出しても、誰にも、彼を責める資格なんかないですよ。
でも、彼は、一人、背負った。誰の理解もなく。何の見返りもなく。いついつまでの我慢と、期限が切ってあるわけでもない。無い無いづくしのロージェノム様ですよ。
ただ、人類全体への愛の為に。
邪悪な存在、とは言い難いように思っちゃう。むしろ、かっこいい。そう言って良いんじゃないのかなぁ。
前回書いたように、アンチスパイラルも、めたくそかっこ良かったしなぁ。
誰も助けになんか来てくれない。奇跡は起こらない。自分の秘めた才能が都合良く開花したりなんかしない。
ロージェノムやアンチスパイラルは、だから、そんな物を当てにしない。
自分の手持ちのカード。泣いても笑っても、使えるのは、それだけ。
そう予測や判断と、期待や願望を、峻別する。
かっこいい。シモンやカミナみたいな可愛げはないけど。
今こうしてキーボードを叩く自分の指先を、自分のものだと思えるのは、自分の意を文字通り体現して、思い通りに動くから、じゃないのかな。
唐突な話題転換で済まぬ。
自分と、それ以外の他者って、そこんところで分けられるんじゃないのかな。思い通りになるか、ならないか。
逆に言えば、思い通りにならない他者が存在しなければ、自分というイメージだって持てなかった筈なんじゃないかな、とか。
自分は、不可能に囲繞されている。不可能によって輪郭されるのが自分。身の程を知る、って、うまい言い回しだよなぁ。
我思うゆえに我あり、とは、すなわち、思い浮かべるしかできないこと、実現不可能こと、自分には思い通りにならない他者との出会いによってのみ、自分の存在が確かめられるということだったんだよ!! な、なんだってー!!
…はっ。過去数分間の記憶がないっ! なにか低級なキバヤシ霊に憑依されていたような気がするっっ!
「燃え」が恥ずかしいのって、身の程知らずって感じだからだよなぁ。まあ、若い子が身の程知らずなのは、やっぱ可愛いところでもあるんだけどね。
だから第17話のタイトルが、「あなたは何もわかっていない」なんだよ、と。
「気合い」が力になるグレンラガンの螺旋力。それは自分を通して他者を蹴っ飛ばしていく、我儘な力。侵略する力。思い通りにならない他者としての現実を、尊重したりしない。相手を尊重して、謙虚に合わせる態度がなくて、相手の理解など出来るはずがない。
「俺にはさっぱりわからねえ!」17話のサブタイトルは、この5話のサブタイトルに呼応しているんだろうなぁ、と。さらに、5話と17話と、どちらもロシウがメインの話だってことは、多分偶然ではないんだろうな、と。まあ、言うまでもなく、おれの想像にすぎないですけど。
ロシウは「わかる」子なんですよ。
アダイ村の司祭と、ロージェノムと、アンチ・スパイラルと同じ、「わかる」側の人。カミナ以下わからず屋揃いの螺旋使いの皆さんとは、何かが違う。
でも、一方、やっぱり、司祭様、ロージェノム、アンチ・スパイラルグループと、全く同じってわけでもない。可能性を閉じてしまおうとはしない。何か手があるのではないかと、博打を打つ。抗い続ける、納得しない、螺旋の気配が漂っている。
この矛盾がいい。
両極を抱えて、どちらにも徹しきれない。この中途半端さが、すごく好きです。
正直、身につまされる。わかる、わかるよぉ、ああああ。
第17話はほんと、最高だったな。
上り詰めて、敵がいなくなって。平穏な毎日を、小さなほころびを繕うせせこましさで、淡々と過ごしていくことの難しさ。
惰性と退屈が、革命の感激を色褪せさせて行く。
アンチ・スパイラルの登場が、むしろ救いに感じられる。おれとしては、実は、アンチ・スパイラルが出てこない、日々ついていく贅肉と、組織の腐敗に耐え続ける、「亢竜悔いあり」って感じの第4部なら、なお良かったのに、と思わないでもない。
まあ、日曜朝の子供番組にそこまで期待するのも酷、ってものではありましょう。
最終話、結婚式、情報連結が解除されていく花嫁。そして20年の経過。「俺を誰だと…だれでもねぇか」と独り言のように呟く、ある男の、孤独と充実。
男の顔に刻まれた年月に、その辺りの含蓄が描きこまれているのだと、おれは思ってしまうわけですけど。
おれらは、どっかで老いて死ぬ。最後は、老いぼれ、敗れ、病み、死ぬ。業績は洗い直され、訂正され、上書きされ、追い越され。
成長期の子供は、ひたすら自分が拡大し強力になっていく感じしか知らないから、その辺り分からない。大人になってからようやく、自分がいつか死ぬ、って当たり前の限界を、実感するんだと思う。いつか自分が消えてなくなり、今のこの生涯の意味など残らないという事実を、分かっちゃいるけど悟れない。悟れないところがつらいんだよ、とシャカは言った。
「シモンは神様じゃないわ」ってヨーコさんは言うけど、神様じゃないか知れんけど、仏陀にはなれるかも。カミナとシモンは「上(かみ)」「下(しも)」から名付けたって話だけど、「神」と「沙門」なんてことはないのかね、とかつまらない言葉遊びをしてみたりとか。いつにも増して下らないこと書いてるな、おれ。
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