オーディンスフィア リプレイ日記20 「ワルキューレ」終章━善悪の此岸━
切りのいい20回目で、ようやく終章に入りました。
ホームポイント
ミリス
「…あれからオズワルド様は
食事もとらず打ち沈んで
おいででした…」
「姫様が魔法からお目覚めになって
あんなに幸せなご様子でしたのに…」
「…死神に連れ去られるなんて…」
「ブロムさんまで怪我をされて…
どうしていいかわかりません」
泣きじゃくるミリス。
衝撃です。
ウサギが一匹泣きじゃくるだけで、空前のピンチ感が醸し出される、ここまで積み重ねられたミリスのキャラクター描写の厚みが生きてきます。
対して、いつも動揺したり悩んだりする方だった筈の、グウェンドリンの沈毅が光る。
次のシーン、絶望的な要素を数え上げるミリスに慌てず騒がず、武装を整え、静かに決意を語る。
「魔王…オーダイン…」
第一章で「賢王」と称えた自分の父親を、世間の通称「魔王」で呼び捨てる。
前章で、かつては「妖魔」とののしった敵の娘に、「陛下」と呼びかけて礼を尽くしたり(結局はぶん殴って指輪を強奪するんですけど)、グウェンドリンが次第に世間を知っていく感じがいい。
膝を屈するのにも似た、自立。
プーカ商人
「心配です…ブロムさんも意識が
まだ戻られないそうですね」
ガイスト商人
「毒殺するなら毒薬はここに…」
「…あいにく暗殺用のナイフは
手持ちにはないが…」
ガイスト商人
「宝は誰にも渡さんぞ…」
「!…金を持っているなら…早く言え」
「私は強欲でいまだ彷徨っているが
…これも悪くはない」
とりあえず、商人ズの台詞挙げておきます。
正義とは。
「宇宙さえも恐れぬ心にだけ宿るものなんだ」とは、山本正之の名曲の一節ですが。
なに書いてんだ、おれは。
最初の角度のズレはわずかなようでも、20回重ねてくると、絶望的な距離になる。なぜオーディンスフィア「ワルキューレ」の終章の感想で「正義」なんて言葉が出てくるのか。
ごめん。
でも、もういいや、しょうがないんだ。
おれは思っちゃったんだ。これは「正義」についての物語だと。
オズワルド様って、全然、正義の人ではない。
放埓無頼。
王子様ですから!とおれは騒いでいるけど、古典的乙女系少女マンガには、実は王子系と双璧をなすヒーローパターンがあるんですよ。
言わずと知れた「不良」。アウトロー。反逆児。
ジャック・ティボーの昔から、乙女は抗う少年に弱いのですタイ。ちなみにおれはジャック×ダニエル派とみせかけて、実はアントワーヌ×ジャックです。略してアンジャク。(誰も聞いてない)。
それに、王子って言ったって、別に、将来を保証されてぬくぬくと育ったボンボンのことなんかじゃないですよ。未来に王土を拓く人、今日のこの日を、壊す人。天を穿つドリル。(あーグレンラガンについても書きてーなー)
王子であるためには、むしろ反体制的であることが必要条件だったりする。だから、乙女的には、しばしば、ヒーローは、王子かつ不良なのですよ!!(いや、それ不可能だから)
そういう「不良」って、善悪で分ける悪とは言えない。確かに善でもないけど。善悪の彼岸に立って、その弁別を超える者。
イイモノとワルモノを分けてスッキリしたい、でも、割り切ることが出来ない。グウェンドリンの苦悩って、そういうことじゃないのかな、って、何度か書いていますけど、彼女の目に鮮やかに登場するヒーローは、そういう不良王子様なのではないか、と。いつものように、想像にすぎないわけですが。
正義は世につれ人につれ。何が正しいかなんて人によって違うよね、なんて、いまどき小学生だって醒めた目をして、テンション低く語ってくれるのではないか。
はい、全く、おっしゃる通りでございます。
そう、おれらは、かつて、絶対に正しいものなんか、見たことも聞いたこともない。
なのに、不思議なことに、なぜか、善悪の観念ってのが、あるんですよ。妥当と不当の感覚といってもいい。別に、テレビの画面でヒーローが「熱血の演技」で叫ぶような正義ではなくて、「この人には年賀状出しといた方がいいかな」とかその程度の判断の基準のことです。
ありませんか、皆さん? おれにはあります。イイコト、ワルイコトっていう区別がある。中身は、他人とは違うかも、っていうか、違うでしょう、おれだけのものだ。でも、その器、枠組み、ハコ、ガワ、なんつうの?を持っている。そこんとこは、大抵の人はみんな同じじゃないのかな? プラトンなら「正義のイデアを知っている」とか言うんだろうか。どうなんですか、物識りの人?
だから、おれらは、決して、本当に善悪の彼岸には立てない。地上に出ても、また空にも天井が出来てしまう。のではないかと。想像ですけど。
さて、そこで、おれの想像ですよ。(っていうかずっと想像ばっかだよ。わかってるよ!)
オズワルドも。グウェンドリンが思うほど、向こう岸の人ではない。
やっぱり、自分のしていることが。あり方が。正しいのか、間違っているのか、どうしても、こっち側の悩みにかえらないわけにはいかない。
グウェンドリンの為、グウェンドリンの為と思って戦っている、つもり、でも、それこそが。結局、グウェンドリンを、自分の為に利用することになってしまっているのではないか。
この堂々めぐりの葛藤こそがオズワルド様。きゅーん、すてき。
その葛藤を、オズワルド様は、自分で許せない。葛藤せず、スッキリとかっこよくグウェンドリンを守らなければならない、と自分に課してしまう。
どうして、スッキリしなくちゃいけないのかなぁ。
グウェンドリンとオズワルドは似た者夫婦、っていうか、おれは同一人物だと思っているんですけどね、特にここんところ、「スッキリしたい」というところが、本当に一緒だよな。
なんで、そんなにスッキリしたい。
どうして、そんなに、イイモノになりたい。
正しくなくっちゃ、何故、いけない。
正義のイデアのよって来たる処は那辺だろう、プラトンなら生まれ来る前から知っていたとか言うのかな、フロイトなら、親のイメージを取り込んで超自我を形成するのだ、とか言うのかも。
わかりません。ちょっと知ったかぶりしてみたけど、世間普遍のことは知らんです。けど、オズワルド様の場合、育ての親に、正義の卸元に売り飛ばされて、はじまった。オーディンスフィアではそう言ってる。(言ってないから。おれの想像にすぎないから。)
オデット、死の国の女王。原作では主神だった筈のオーダインが、地方の一豪族にすぎないこの世界の中では、生物の原則、生と死をつかさどる、神にもっとも近い存在。
そしてオズワルドの力の源。
グウェンドリンの力の源でもある。
「私の宝石から作ったその槍でどうしようというのか」
その問いかけが怖かったなぁ。足元が崩れるように心細くなった。
彼女の掌の中で、顔色なく横たわる、我が夫。呼びかけに微動もせず。
あれはグウェンドリンの姿でもあるのではないか。
自分の力では往くことも帰ることも出来ぬ女王の庭で。頼りとする武器も、もともとは敵手の宝石。かなわない。何も出来っこない。
考えてみると、実に大きなものを提供してくれているんだ、オデット女王は。
血肉を与え、身を粉にして尽くした私に、ありがたいとは思わぬのか、と、問いつめたいくらいの気持ちになったとしても、当然だと思う。一人で大きくなったような顔しやがって、一体誰のおかげなのか、と。身の程知らずの小娘が、天に唾する愚かさを知れ。その力、もともと誰のものと思っている。
死が、貸しを取り立てにあらわれる。物語の終りに、必ず。
それがこの世界の正義。
逃げられない。
女王は何にも間違っちゃいない。メルヴィンとの契約を忠実に守った。オーダインは誰がどう見てもコソ泥だ、奴が悪い。その貸しを、返してもらって何が悪い。当然の正論ですよ。オデット女王の言うことは、ひたすら正しい。死は最後に帳尻を合わせる。
うん。なんとなく、その感じは分かる。きっと、つい遊んじまった夏休みの終盤「やっべー宿題かたづいてないよ」って、焦る感じだ。先生、怒るだろうな、どうしよう、みたいな。
でも、おれには不思議に思えちゃうんですけど。
正義というものが、守ったり、導いたりするものではない。追いかけてきて、非を鳴らし、罰を科すだけだ。優しくない。変じゃないか。正義を感じるのが、自分が責められるときだけなんて。
おかしいよ、その感じ。どうして、グウェンドリンは、オズワルドは、そんな風に感じてしまうんだろう。
正義が、常に自分を責める。自分は、いつも、間違っていて、悪い子で、責められないように、怒られないように、がんばんないと。だから、頑張ったんだ。オーダインの為、メルヴィンの為に、頑張ったんだ。
だけど、その頑張り自体も間違いだった、と。オデットの前で、二人は感じたのではないか。
長くなっちゃったんで、続きます。
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