オーディンスフィア リプレイ日記9 「ワルキューレ」第二章 ━オーダインとブリガン━
一部では、マダオとまで言われるオーダインだけど、そんなにまるで駄目かな。中の人つながりなのは分るんですけど。
ネタにマジレス的なんだけど、改めて言っておきたい。オーダインは、本当は凄いですよ。若い時、賤しい小者に身をやつして三賢人に仕え、魔法を盗んだこととか、その魔法と知識を使って冥界への道を開き、魔石を持ち帰って武器として使用するようになったことや。人の身でありながら、竜巻の王にして蒼穹の覇者(自称)の暴竜ワーグナーと引き分けて、竜からその敢闘を讃えられ、その血を分け与えられるとか。
まさに古典的英雄譚そのもの。どこの聖杯戦争に召喚されたって恥ずかしくない履歴です。ゲームの主人公達は、いずれの5人も、この人に比べたら、たかだか人間風情、という感じ?
ただ、この人は、「では、それらの偉業と冒険が、何を求めてのことなのか」と問われた時に、非常に虚しい。
終焉で「この時が来るのは分かっていた。そのためにバロールを作り上げたのだ」というような述懐があって、そうか、あえて血も涙もない覇王となって、世界を破滅から防ごうとしたのか、と、おれとしては思ってあげたかったんだけど。でも、やっぱり、なんか、そんな感じしないんですけど。
オーダイン的には、その逆で、「自分が世界征服をするために、まず世界を破滅から救わねば」みたいな? …「別に世界のためにたたかっているんじゃないからね」ですか? ツンデレ? やっぱ世界ラブなのか?
どうかねぇ。おれには、マジ、能く分かりません。すんません、この人から、愛を感じないんですよ。世界を手に入れたいと望んでいるようなんだけど、望んで、その先、世界をどうしたかったんだろう、って。不思議で仕方がない。
マダオっつーかさ、ゲンドウだよね?
みんな、あからさま過ぎるだけで言わないだけで。冷たい父親をやらせたら日本一の立木文彦が演じている時点で、もう、キャラが立っている。
本当に強い男は、優しいです。
言い古された言葉だけど、事実だから仕方がない。
冷たい、厳しい、それらの特徴はちょっと見は力を連想させるんだけど、それは内実の脆弱の裏返しでしかない。父親やるには30年早い、みたいな? 自身がまだ、母親のおっぱいを恋しがる子供なんですよ。
二章六幕でさ、ベルベットに「一段と面差しが母に似てきたではないか」とか言う辺り。
めちゃくちゃキモいんですけど。ベルベット役の沢城みゆきさんですか、例によっておれはこの人を知らんかったのですが、その台詞を受けての「キモ、何この親爺キンモー」みたいな雰囲気の、息をのむ演技がすごくいいです。
だってさ、母を失った娘に対する態度ではないもの。親らしい、包み込むような態度じゃなくて、むしろ、自身がその娘から、亡き恋人からかつて得ていたものを、なおも得ようとするかのような、いやらしさがする。
べルベットの母についての、互いの意見が食い違うのがいい。オーダインも嘘を吐いているつもりではないんでしょう、自分では。
だけど、自分のしたいことだけして、相手には何も与えず見捨てたんだろうなぁ、って。容易に想像できてしまう。今だって、目の前で、実の父親を詰らざるを得ないベルベットの気持ち。この男は全然わかろうとしない。自分の言いたいことを言うだけだ。全然思いやりがない。
オーダインは絶対マザコンだと思う。相手に母親役を押し付けて、自分は幼児のように奪うだけ。
オーダイン王って、何かに関心を持っても、所有する、奪う、侵略する、といった形にしか結びつかない。手に入れた後の時間、味わい、満たされ、目と目を見かわして、そっと微笑み合うような。穏やかで充実した時間の静謐がない。常に何かに追われているような、落ち着かぬ狂騒ばかりが耳障りだ。
そんな風にしか生きられないオーダインも、きっと、せつないんだろうなあ、とかさ、思いますよ。求めれば、求めるほどに、飢えと渇きに苦しむタンタロス。辛かろう、苦しかろう、とは思ったりもするわけですが。
傍から見たら、ただのでかい赤ん坊。おなかすいたよ、とひたすら泣き喚く。赤ん坊だから、一人で充足できない、誰かから何かを奪うしかない。そして、また、赤ん坊だから、お返しに誰かに何かを与えることはできない。一方的に吸い続け、奪い続ける。
目的のない巨大な欲望、それが、おれから見た、オーダイン。
で、そこまで煮詰めると、オーダインは全くブリガンとそっくりなわけです。瓜二つ、同じ人みたいだ。足音同じだし。今時足音でキャラ付けしねーよな、タラちゃんか。
っていうか、ある意味、本当に同じ人なんではないか。例によって、おれの勝手な想像なわけですが。
身勝手に一方的に求め続けるだけのでかい赤ん坊、って、ある意味典型的に男性的というか、そこらにいっぱいいませんか。いるよね。別に特定の個人を意識していませんよ。本当でスヨ?
グウェンドリンは(恐らくはグリゼルダもそうだったから)、父王がでかい赤ん坊だってことを、認められない。それはそうだ。彼氏や夫ならまだしも(別れられるけど)、お父さんなんだぜ。どうして子供の方が、お父さんの赤ん坊っぽさを認め、許してやらなくっちゃいけないのよ。
その怒りが、すべて、ブリガンへの八つ当たりに回っている気がするんです。
ブリガンは、まあ、本当にああいう人なんでしょう。でも、グウェンドリンが本当に怒っているのは、彼に対してではないんじゃないかな、とか。
何年か前の大河ドラマ「新選組!」で、土方が近藤の分まで憎まれ役を買って出たり、オーベルシュタインがラインハルト様の分まで嫌われたりするように、ある人のイメージを美化するために、別の人が過剰に貶められたりとか、人間の集団の中では結構ありそうなことに思うわけですよ。土方やオーベルシュタインは、計算づくですけど。
おれの想像なんですけど。
グウェンドリンは、自分の支えである父親を美化するために、頑張ってきたわけだけど、でも、もう、それは限界。
結局、オーダインは、でかい赤ん坊にすぎないわけで、彼女が望むような、愛情や安心感や保護や、そういう癒し系の暖かさを他人に与えることが出来ない。
で、このシナリオがすごい秀逸だなぁ、と思うのは、グウェンドリンが父親の限界に気付くのが、「姉」がらみだ、ってことなんです。
父親を信じすぎていた姉、翻って、父を全く信じず激しく攻撃する異母姉。
グウェンドリンには、父親との葛藤を、自分のこととして、向かい合うことが、まだ出来ないんでしょう。自分をその上に重ねられる、素敵なお姉さんのこととしてでないと、悩むことさえできない。
そのいとけなさ。いい歳して、大人になれないのは、この娘のせいなんだろうか。彼女の傷つきの深さを、感じられる気がするんです。
そんな感じで、そろそろ三章に進みます。
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